抄録
近年,世界においては,移民,出稼ぎ,留学,難民などによる国境を越えた人びとの国際移動が活発化している。地域によっては,増加する新来のエスニック集団とホスト社会の住民との間でコンフリクトが生じているところもある。その一方で,エスニック集団の多様な文化を活用したエスニック・ツーリズムや,多民族コミュニティの再生による都市再開発が効果をあげている地域もある。
日本においても,法務省の在留外国人統計によれば,1983年末に82万人であった在日外国人は,1993年末には132万人に,2003年末には192万人に,そして2013年末には207万人に増加し,日本の総人口の1.7%を占めるまでになっている。中国人,韓国人,フィリピン人,ブラジル人などのニューカマーの定住化がみられる一方で,集住化に伴うホスト社会とのコンフリクトやヘイトスピーチなどの問題もメディア上で報じられるようになってきた。
そこで,本シンポジウムでは,世界および日本各地のエスニック集団とホスト社会の相互関係について,各発表者が実施してきたフィールドワークによる研究成果にもとづいて,近年のエスニック・コンフリクトの特徴をさぐると同時に,今後の日本社会の多国籍化に向けての課題や対応などについて考えてみたい。