日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 519
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発表要旨
中央アジア,タジキスタン北部における遊牧的牧畜
タジキスタン
*白坂  蕃渡邊 悌二宮原 育子
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抄録
中央アジアのパミール高原北部は標高が高く、とくに厳しい自然環境のなかで牧畜にしか生業を見出しえない地域である。ここでとりあげるタジキスタン北部のKara-kul地域にける家畜はヒツジ・ヤギ・ヤクで、冬季の厳しい環境のためにウマ・ウシの飼育を欠いている。  この地域は1920年代にソ連に組み込まれたが、それ以前の生業は、いわゆる遊牧であった(とみられる)。ソ連時代になり、この地域の遊牧民はソホーズ に組み込まれて、定住を強制された。その結果、利用空間の高低差に注目すればカラ=クルの人々は主に正移牧ascending transhumanceを営んでいるが、一部の家族は水平移牧horizontal transhumanceをしている。  ただし、カラ=クルのひとびとは夏営地(jailoo)に加えて、春季の放牧地(küzdöö)と秋季の放牧地(bäärlöö)という概念を持っている。演者らが“遊牧的”牧畜と表現した所以である。  the Kara-kulの人々は夏季には家族単位の放牧をするが、冬季には集落内で数家族から十数家族がまとまってヒツジ・ヤギを、毎日、周辺の山地に放牧する(kezüü)。  タジキスタン共和国は1991年にソ連の崩壊により独立したが、経済的貧困に直面している。本来であれば保護の対象とされるべき植物や野生動物という自然資源が消費されている。このような自然資源の消費を阻止し、牧畜を生業として確立するための方策が求められている。
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