日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 306
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発表要旨
日本の都市類型化と住宅都市の環境特性
*中口 毅博
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抄録


本研究は統計データを用いて日本の市区町村を類型化した上で、住宅都市の環境特性、すなわち、再生可能エネルギー設備容量、1人あたりCO2排出量、通勤・通学時の自家用車利用率、ごみ資源化の種類数、下水道処理率、環境パートナーシップ組織の組織率、環境教育実践率の特徴を明らかにすることで、住宅都市の環境政策の課題と今後の方向性の検討に資することを目的とした。
住宅都市の定義は、①住居系用途割合が2割以上、②昼夜間人口比が0.9以下(=昼間の人口流出が夜間人口より1割以上多い)の2つの条件を満たすものとした。また、比較の対象として「農林業都市」「工業都市」「商業都市」の分類を行い、その際の指標として1次産業、2次産業、3次産業の従業者の全従業者に占める比率の偏差値を算出し、偏差値が60以上の当該類型とした。
その結果、住宅都市は136市区町村となった。その分布は図1に示すとおり、3大都市圏に集中している。人口密度は、全国平均1,531人/km2に対し住宅都市は4,655人/km2と最も高い。平均年齢は、全国47.6 歳であるのに対し住宅都市は44.3 歳で最も若い。2005~2010年の人口増減率は日本全体で-2.9%減少しているが、住宅都市は1.5%の増加である。以下住宅都市の環境特性を述べる。
宅地率は全国平均7%%であるのに対し、住宅都市は36%と最も大きく、次に大きい商業都市の11%に比べ3倍になっている。 面積あたりの再生可能エネルギー期待可採量は全国平均が1,456GJ/km2であるのに対し、住宅都市は358GJと他の都市類型と比較しても最小となっている。1人あたりCO2排出量をみると、全国平均が9.6t/人であるのに対し、住宅都市は5.3 t/人とおよそ半分である。通勤・通学時の自家用車利用率は全国平均が63.6%であるのに対し、住宅都市は36.8%と小さく、他の類型と比べても最も小さくなっている。1人1日あたりごみ排出量は全国平均が892g/人日であるのに対し、住宅都市は822 g/人日と最も小さい。下水道処理率は全国平均が78%であるのに対し、住宅都市は92%と最も高い。環境パートナーシップ組織の組織率は全国平均が28%であるのに対し、住宅都市は42%と最も大きい。環境教育実践率は全国平均が18%であるのに対し、住宅都市は28%と商業都市と並んで大きい。 


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