日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S1103
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要旨
地域課題解決に向けた地理空間情報の活用とシビックテック
*瀬戸 寿一
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抄録

1.はじめに 2000年代後半より,欧米諸国において「オープンガバメント」と称する政治思想が注目され,政府機関の意思決定への市民の関与やICTを介した市民参加といった参加型民主主義の新しい運動が広がっている.米国や英国では2009年より,政府の透明性や市民参加,官民連携の促進(行政効率化)を3原則に位置づけ,公共データの二次利用を含めた開放(オープンデータ)に向けた様々な取り組みを政府レベルで推進してきた.特に米国ではこれを支えるために,ICTを活用した地域課題の解決を目指す「シビックテック」を活動内容の中心に掲げた,非営利組織「Code for America (CfA)」が2009年に設立され,州政府や地方自治体との協働によるアプリケーション開発が推進されている.  日本でも以上の状況を背景に,2012年以降に政府や地方自治体単位で徐々にオープンデータに関する取り組みが始まりつつある.またCfAと同様に2013年には非営利組織としてCode for Japan(CfJ)が有志によって設立され,各地でシビックテックに向けた活動を展開しつつある.  以上を背景に,本研究は日本におけるオープンデータの状況を概観し,市民主体によるデータ活用の整理を通じて,参加型GISの新たな可能性と課題の検討を目的とする.

2.日本におけるオープンデータの公開状況
日本におけるオープンデータは2010年末に福井県鯖江市が「データシティ鯖江」として活動を開始したことを契機に,2012年7月に内閣府による「電子行政オープンデータ戦略」が策定され,国レベルでの取り組みとして計画されることとなった.また,2013年6月のG8ロックアーンサミットで「オープンデータ憲章」が採択され,地理空間情報の重要性も明記された.これにより,政府機関や地方自治体における行政情報のオープンデータ化が急速に整備された.特に,都市計画図や航空写真など大規模な地理空間情報を公開する先進的な地方自治体が幾つか現れた.  オープンデータを公開している地方自治体を,各Webページ上で調査した結果,2015年8月末時点で141自治体が該当し,うち県単位で21(44.7%),市町村単位で94(5.4%),政令指定都市の区単位で26区確認された.多くの自治体は2014年以降整備され,データ数も総計10,000以上である.オープンデータは統計や施設一覧といった表形式が多く,約4割のデータはCSVやXLS形式で公開されている.同様に緯度経度や詳細な住所,地図データなど何らかの位置情報が付与されている地理空間情報のオープンデータは,様々な形式で全体の約4割これに該当する.

3.地域課題に向けたオープンデータの活用 地方自治体によるオープンデータの公開と共に,日本でもIT技術に長けた市民が中心となり,CfAの活動を参考に,各地域でオープンデータの積極的な活用とアプリケーション開発を進めるシビックテックが進められている.特にCfJの支援プログラムに認定され活動しているブリゲイドと称する団体(Code for X)は33存在し,認定準備中など活動の途上にあるブリゲイドも33以外に20団体ある.  活動の成果として開発されるアプリケーションはいずれも地域課題に沿ったものが多く,地方自治体の予算決算データを用いた税金の使用状況を可視化する「税金はどこへ行った」(対象自治体数:140)を始め,Code for Kanazawaによるゴミ収集に特化したアプリケーション「5374.jp」(対象自治体数:50)や,Code for Sapporoによる「さっぽろ保育園マップ」(対象自治体数:7)などが代表例として挙げられる.これらのアプリケーションの最大の特徴は,生成されたソースコードがCfAと同様にオープンソース化され,Githubを通して公開されることにある.したがって,各地のCode forコミュニティが,これらのソースコードを用いて地方自治体のオープンデータを再利用可能になる.

4.おわりに 日本では公共データのオープンデータ化が近年高まり,市民側も,地域課題を解決することを目的とするアプリケーション開発が進められている.他方,オープンデータとWeb地図を用いた開発事例は多いが,簡易な空間分析(距離バッファや空間集計など),あるいは時々刻々と変化するような空間データを取り入れた事例は少なく,地域住民の行動変容や予測といった意思決定に寄与できるツールと共にリアルタイムなオープンデータ公開が喫緊の課題である.

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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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