主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2020年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2020/10/10 - 2020/11/22
はじめに
高校では、2022年度より『地理総合』が必修となり、その柱として、GISが導入されることとなった。だが、GIS導入に際して、多くの問題が挙げられており、谷・斎藤(2019)によると、これらの問題の解決策として、WebGISの活用が期待されている。
そこで、筆者らはWebGISを作成するためのjavascriptライブラリであるLeafletに着目し、Leafletを用いたWebGIS作成教材とWebGIS作成システムを開発した(根元・夏目 2019)。その結果、WebGIS作成教材に関しては、Leafletを用いたWebGIS作成の基礎的な部分を扱った2018年度および2019年度のGIS Day in 東京の講習会で好評を得た。また、WebGIS作成システムは茨城県立水海道第一高等学校社会部のGISおよびプログラミング初心者の高校生が階級区分図を作成することに成功し、日本地理学会2019年春季学術大会にて発表する支援をすることができた。
これら一定の成果を得られたLeafletを用いたWebGIS作成教材とシステムだが、利用者の中から、より幅広い図形の追加や表現をできるようになりたいという要望や凡例表示がうまくできないといった質問が寄せられた。そこで、本研究では、GISおよびプログラミング初心者でもLeafletを用いてより幅広い表現のWebGISが作れるようにWebGIS作成教材の内容を拡充し、図形の表現や凡例表示のソースコードを支援できる図形スタイル作成ツールを開発した。
研究方法
本研究では、Leafletを用いたWebGIS作成教材について、要望や質問があったラインデータやポリゴンデータの追加と表現方法について、インターネット上の様々なLeafletのドキュメントやソースコードを調査した。それらをまとめて、GISおよびプログラミング初心者でも自分のWebGISにラインデータやポリゴンデータを追加、スタイル設定を行って様々な表現ができるように教材を作成した。また、GISおよびプログラミング初心者では、自分でソースコードを作成することは困難であると考えられるスタイル設定と凡例表示について作成を支援するツールを開発した。
Leafletを用いたWebGIS作成教材の拡充
Leafetを用いたWebGISの作成に関しては、Leafletの公式サイトに掲載されているドキュメントにチュートリアルとともに設定方法が記載されている。しかし、筆者らが確認したところ、公式サイトのドキュメントに掲載されている図形の設定方法は、ポイントデータに関する記載が多く、ラインデータやポリゴンデータに関しての記載は少ないことがわかった。よって、Leafletの利用方法やソースコードをインターネットで検索し、確認して、特にラインデータとポリゴンデータの追加とスタイル設定方法を調査した。その結果を整理し、WebGIS作成教材にラインデータとポリゴンデータの追加とスタイル設定についての内容を拡充した。
図形スタイル作成ツールの開発
Leafletを用いて、ラインデータやポリゴンデータの追加は容易にできることがわかった。しかし、図形のスタイル設定は様々なパターンがあり、レイヤーの図形全てを同一のスタイルにすることは難しくないが、様々なバリエーションをもった設定を行い、かつそれを凡例表示することは手作業でプログラミングするのは煩雑な作業が必要になり、GISおよびプログラミング初心者には難しい作業であることがわかった。そこで、GUI画面で設定することで、いくつかのスタイル設定と凡例表示のソースコードを自動生成するツールを開発した。これによって、全てのパターンではないが、比較的容易にスタイル設定と凡例表示をLeafletを用いたWebGIS上にできるようになった。
謝辞
本研究は、JSPS科研費20K13992の助成を受けたものです。ここに記して御礼申し上げます。
参考文献
谷 謙二・斎藤 敦 2019. アンケート調査からみた全国の高等学校におけるGIS利用の現状と課題—「地理贈号」の実施に向けて—. 地理学評論 92: 1-22.
根元裕樹・夏目宗幸 2019. Leafletを用いたWebGIS作成教材および作成システムの開発. 地理学会発表要旨集 96: 88.