日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 337
会議情報

発表要旨
地域言語と教育言語
オランダ・フリースラント州の初等教育における言語
*池庄司 規江
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

2.背景

地域言語(Regional Language)は,国家において公用語とされるコトバ以外の言語を指す。1992年に「多様性のなかの統合」を掲げて発足したEUでは,多文化主義に基づき多言語主義が採用された。これにより,国民国家の形成とともに広がった単一言語主義が,ヨーロッパの複言語主義を含む複文化主義政策下でダイグロシアまたはポリグロシアなものに揺戻されつつある。オランダの公用語はオランダ語であるものの,オランダ北東部のフリースラント州では地域言語であるフリジア語もまた公用語となっている。

2.研究対象地域と研究方法

2020年のオランダの総人口は1,740.7万である。このうち,65.0万人がフリースラント州居住者である。仮に,フリースラント州居住者全員がフリジア語話者と仮定すると,オランダ国内におけるフリジア語話者の比率は3.7%である。しかし,オランダにおける複言語主義は,ヨーロッパにおける展開よりも相当に早くから行われてきた(de Graaf 2016)。2022年現在,州内のすべての初等教育学校にフリジア語とフリジア文化の学習が義務づけられている。しかしながら,社会・経済的要因をはじめとした様々な要因により,フリジア語の継承はますます困難になっていることが指摘されている。そこで,言語継承機能を持ち合わせる学校教育における教育言語に着眼して,フリースラント州における地域言語(フリジア語)の現状について検討する。

3.現状

教育言語により州内の小学校を分類すると,モノリンガル・スクール,バイリンガル・スクール,トリリンガル・スクールの3つに分けることができる。図1はフリースラント州内の小学校における教育言語を示している。発表では,図1をはじめとした図表からフリースラント州における地域言語と教育言語の現状について報告する。

Fullsize Image
著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top