日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S204
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発表要旨
ドローンを活用した高等学校「地理総合」における授業実践
*伊藤 恵
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抄録

ドローンを活用した高等学校「地理総合」における授業実践

Class practice of "Geography synthesis" in high school using drone

伊藤 恵(仙台育英学園高等学校)

Megumi ITO(Sendai Ikuei Gakuen High School)

キーワード:ドローン,地理総合,地理院地図,世界遺産,世界の地形,防災

Keywords: Drone, Geography synthesis, GIS Maps, World Heritage Sites, World Topography, Disaster Prevention

Ⅰ はじめに

 平成30年告示の高等学校学習指導要領において,「イ 地理的な見方や考え方及び地図の読図や作図,衛星画像や空中写真,景観写真の読み取りなど地理的技能を身に付けることができるよう系統性に留意して計画的に指導すること」とあるように,高等学校の地理の授業において,衛星画像や空中写真,景観写真の読み取りの地理的技能をとおして,地理的な見方・考え方を身につけることの重要性が示されている。また,井田(2000)は,「地理は空間を対象としているが, その原点は景観であり, 地理学習においては景観から様々な事象を読み取ることが必要不可欠である」と指摘している。  

 このように,景観写真を活用した地理の授業実践は,新鮮な驚きや好奇心を奮い立たせ,グローバルな視点,あるいはローカルな視点双方において,地理的考察への関心を高める手段となる。

 筆者はかねてより,景観写真を用いたフォトランゲージの授業実践を行っていたが,動画の方がよりリアリティで学習者にとってはイメージしやすいと感じ,国土交通省認定ドローン技能操縦士の資格を取得するとともに,日本のみならず海外にも足を運び,現地で空撮したドローンの映像を素材に授業を展開している。

Ⅱ 研究目的

 上述のように,ドローンは地理の授業において有用なツールであると考える。そこで本研究は,ドローンを活用した授業実践をとおし,その有効性と活用方法を考察することを目的とする。 まず,ドローンの最大の特徴は,写真だけでなく動画撮影も同時に行える点である。これは,言うまでもなく,セスナ機などの航空写真撮影とは異なる点である。航空写真は,それほど頻繁に更新されるわけではないため,目まぐるしく移り変わる景観の空撮には,リアルタイムで撮影できるためドローンが適しているといえる。また,自分で角度を変えて見たいアングルから撮影することができ,撮影した動画から写真を切り取ったり加工したりするなど,編集が容易な点も魅力である。さらに,機体も小型であるため,人が潜入できないような場所での撮影や,被写体に接近して撮影することが可能である。航空法により高度150mまでしか飛行できないが,それが逆にGoogle Earthとは違った地形の凹凸や臨場感を直に感じることができる。 以上のことから,空間的配置がわかりにくいものでも,ドローンによる視点を加えることによって,理解を促進する効果が期待できる。

Ⅲ 「地理総合」におけるドローンを活用した授業実践

 実践の主な内容については,以下のとおりである。

第1部 地図でとらえる現代世界

●「地理院地図」の利用とドローンの活用

●「世界遺産」学習におけるドローンの活用

第2部 国際理解と国際協力

●「世界の地形」とドローンの活用

第3部 持続可能な地域づくりと私たち

●「東日本大震災」の津波浸水地域とドローンの活用

Ⅳ 今後の展望

 今後の展望は,フィールドワークにおけるドローンの活用である。実際に巡検により,学習者が自分の目でとらえた視点に加え,上空からの巨視的な視点を付加して観察することで,より臨場感をもってとらえることができると考えられる。ドローンを活用することで,教師がその場で空撮した動画を,見せたいアングルからリアルタイムで学習者に提供することができることは大きな利点である。 このように,「地理的な見方・考え方」をより深く身につけるための,有効な学習方法になり得ると期待できる。

<参考文献>

・井田仁康(2000):『世界を巡って地理教育』,井田仁康編,二宮書店,pp.9-14

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