日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P062
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リモートセンシングと機械学習を用いた環境モニタリング手法の検討 -釧路湿原を対象として-
*棚橋 廉中山 大地松山 洋
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抄録

国内の湿原の面積は,1870年代から2000年代にかけて約60%減少したことがわかっている.北海道東部の釧路湿原は1947年から1996年までの49年間で湿原の20%が減少し植生の変化が進んでいることが指摘されている.近年では,学術的価値の高さから湿原の保護に関する動きが高まっており,国立公園特別保護地区やラムサール条約で保護される湿原が国内に多く存在する.保護という観点から足を踏み入れての調査を頻繁に行うことは困難であるため,航空写真を基に目視で判断する手法や,衛星画像を基に土地被覆・植生分類図を作成する方法などが検討されてきた. 本研究では釧路湿原を対象に,リモートセンシングデータを基に機械学習・教師付き分類を用いて植生図を作成することで,機械学習を用いたリモートセンシングが湿原の環境モニタリングに有効な手法であるかを検討する.十分な精度の植生分類モデルを作成することができれば,過去の衛星データを用いて時系列で植生の変化を追うことが可能となる.本研究では教師付き分類で土地・植生被覆分類図を作成するにあたり,目的変数を環境省植生図の統一凡例とし,説明変数を,Landsat 5が取得した地表面反射率とそれらから算出したNDVI(正規化植生指数),NDWI(正規化水指数),NDMI(正規化湿潤指数),NDSnowI(正規化雪指数),NDBuilt-upI(正規化都市化指数)とした.Random Forestによる分類では,総合精度:0.98,Kappa係数:0.97の精度で植生分類図作成することができた.SVMによる分類では総合精度:0.80,Kappa係数:0.73の精度で作成することができた.教師データである植生図と,出力された植生分類図の各クラスのピクセル数を比較したところ,クラスごとの面積の大小が,分類の精度に関係している可能性がある.今後,時系列での植生変化を観測するためには,どの程度の精度を得ることができれば良いか,Random Forestの決定木の構造やConfusion Matrixを基に検討していく必要がある.

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