主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2024年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2024/09/14 - 2024/09/21
世界地誌の学習に用いられる比較地誌はオーストラリアとカナダや、オセアニアと東南アジアというように、似ている地域や対照的な地域、あるいは近隣の地域や関係の強い地域が選ばれている。そして、比較地誌の方法は、それぞれの地域の自然-歴史文化-社会経済を網羅的・体系的に学び、共通性や異質性を理解し、それぞれの地域の性格を並列的に理解するものである。しかし、そのような比較地誌は教科書や大人たちの要望であり、高校生が本当に望むものなのかという疑問が少なからずある。東京都立大学の高大連携事業の高校生探求ゼミナールにおいて、高校生が比較地誌を自由に行うと、その対象は教科書や大人たちの思惑と必ずしも一致しない。オーストラリアやニュージーランドの比較地誌の対象として多く選ばれるのは日本であった。例えば、ニュージーランドのオークランド近郊の酪農景観を面白いと思ったのは、東京近郊の酪農景観と全く異なるものであったためでった。そこから、ニュージーランドと日本の比較地誌が始まり、酪農景観に関する自然、社会経済、歴史文化がランダムに重層的・螺旋的に比較されていく。いわば、従来の比較地誌は記録に残る学習であり、景観からの比較地誌は記憶に残る記憶に残る学習といえる。