日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 209
会議情報

大規模緑地公園再開発計画の屋外温熱環境影響評価
*一ノ瀬 俊明潘 毅
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

実際の都市内大規模緑地公園再開発計画をテーマに、屋外温熱環境の数値シミュレーションにより、建築形状や土地被覆の変化による夏季日中の暑熱リスク上昇を推定した。地表面温度や風速、気温、湿度への影響により、風下側隣接住区の棟間における温熱環境変化は、季節、時間帯、気象条件次第では、一定割合の住民が変化に気づく程度である可能性が指摘された。しかしこの結果は、開発反対の視点で計画を注視している住民らの認識と乖離していた。

茨城県つくば市の県営洞峰公園(当時:現在はつくば市に移管済み)は、東西南北それぞれ1辺数百mのスケールを有する緑地公園である。県庁が提示した再開発計画においては、公園内の野球グラウンドがグランピング施設へ変更され、それに伴い数haの樹林地が駐車場へ変更される。近隣の住民からは、公園内の希少動植物相の喪失に加え、暑熱リスクの上昇についても懸念する声が上げられ、2022年夏の県庁による説明会と、それと前後した住民グループの討論集会を契機に、演者も当該グループの活動に専門家の立場で参与観察をはじめ、本報に述べるアセスメントを試みた。今回は、ドイツで開発され、近隣住区スケール(数百m四方)における屋外温熱環境評価ツールのENVI-metを用いた。1年を通じ最悪のケースを想定し、7月末の猛暑日の午後3時を計算対象とした。公園の西側に道路をはさんで中高層住宅街区が隣接しており、ここへの影響を想定して、鹿島灘からの海風(東風)が卓越する晴天日の気象データを入力条件とした。一方、懸念すべき気象条件(つくばAMeDAS)を日最高気温30℃以上、東風が卓越、十分な日射量で絞り込んでみると、それらの出現時間は7~8月日中の5%程度(毎日発生しても30分)であり、当該住区の棟間におけるPMVの上昇は0.3程度と見積もられた。これは10%程度の住民が、従前と比較して暑さの度合いが変化したと感じるレベルの変化である。なお、計算の入力条件を検証するため、2023年7月26日12:37に洞峰公園周辺地表面温度のUAV観測を行った。駐車場が60℃以上となっているのに対し、芝生が55℃前後、樹冠表面が45~50℃程度となっており、計算結果との整合性を確認済みである。

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top