抄録
症例の概要:上顎部分欠損に対する補綴治療が患者の歯質削除に対する強い抵抗感および審美的要求によって局部床義歯から固定性補綴装置に移行した症例である.
考察:審美障害は局部床義歯あるいは固定性補綴装置の装着によって,程度の差はあるもののいずれも改善した.アンケート調査における摂取可能食品は,初診時,局部床義歯装着時,固定性補綴装置装着時の順に増加した.これは補綴装置の変更による咀嚼能力の改善とともに,種々の精神的要因による嗜好品の変化が影響したものであると推察された.3年経過した現在は歯間乳頭の消失に伴うブラックトライアングルの発現を認めるものの,歯周組織とともに安定した状態を維持している.
結論:上顎部分欠損症例に対する治療が可撤性から固定性補綴装置へ移行したが,最終的には患者の要求を満足させることができた.