抄録
症例の概要:54歳の女性(当科初診時).上顎前歯部の審美障害を主訴に当科を受診した.全顎的に中程度の歯槽骨吸収を認めた.審美性の改善のため,矯正機能をもつ咬合挙上装置を用いて,前歯の口蓋側への傾斜移動を行った後,硬質レジンによる接着性スプリントを装着した.違和感などが無いことを確認し,下顎臼歯部と上顎前歯部の補綴処置を行った.
考察:中程度の歯周病患者に対して審美的補綴を行い,患者の高い満足度が得られた.補綴終了後,4年が経過したが,審美性に大きな変化はなく,咬合と歯周組織ともに安定した状態を維持している.
結論:本症例に対して咬合挙上と矯正治療を含む審美的補綴を行い,長期的に良好な経過を得た.