日本補綴歯科学会誌
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原著論文
味の広がりを認識するのに必要な咀嚼回数をもとにした新たな味覚検査法の確立
沼尾 尚也山下 秀一郎笠原 隼男富田 美穂子浅沼 直和
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2009 年 1 巻 4 号 p. 378-385

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抄録
目的:これまで行われてきた味覚に関する検査法は,ある濃度に調整された特定の味質を口腔内に入れた際に,単にそれを認識可能かどうかについて判定する手法によって評価してきた.しかし,咀嚼の進行に伴う口腔内での味の広がり程度を基準とした研究は少ない.そこで,本研究では一定濃度の味質(甘味)を試験試料に混入しこれを咀嚼させた場合に,あらかじめ規定した味の広がり程度を認識できるのに何回の咀嚼が必要かを調べることで,その個人の咀嚼の進行に伴う味の認識能力を客観的に評価する検査法を新たに確立することを目的とした.
方法:被験者は健常有歯顎者43名(男性24名,女性19名,平均年齢30.0歳)とした.3%アガロースにスクロースを2%と5%の濃度になるように添加して試験試料を作製した.被験者には,舌一部および舌全体に味を感じるまで試料を咀嚼するように指示し,咀嚼回数を測定した.
結果:規定した味の広がり程度を認識するのに必要な咀嚼回数は,特に5%スクロース試料において女性の方が少ない値を示した.味の広がり程度が拡大するのに伴い認識に必要な咀嚼回数は増加する傾向を示し,スクロース濃度が濃くなるにつれ咀嚼回数は減少する傾向を示した.
結論:規定した味の広がり程度を認識するのに必要な咀嚼回数の測定を行うことは,咀嚼の進行に伴う味の認識能力を客観的に評価する新たな味覚の検査法として有効な手段になりうる可能性が示唆された.
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© 2009 社団法人日本補綴歯科学会
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