抄録
目的:マウスガード(以下MG)の装着が顎関節におよぼす影響については未だ不明な点が多い.そこで本研究は,MGの咬合支持領域の違いが咬みしめ時の下顎頭変位に及ぼす影響を明らかにする目的で,咬合支持領域の異なる3種類のMG装着時における最大咬みしめ(以下MVC)時の下顎頭変位を測定し検討を行った.
方法:被験者は健常有歯顎者10名(平均年齢27.1歳)とした.咬合支持領域の異なる3種類のMG(前歯から第二大臼歯まで全ての歯に咬合接触が存在するType77,第一大臼歯まで咬合接触が存在するType66,臼歯部のみに咬合接触が存在するType47)を製作し,咬頭嵌合位(以下ICP)と3種類のMG装着時において,最大咬みしめ(以下MVC)時の下顎頭変位を超音波方式の下顎運動機能解析装置であるWin Jawシステム®を用いて測定した.
結果:MVC時の下顎頭変位量はICPと比べType77, Type66が上方への変位が有意に大きかった.また,ばらつきは前後方向においてICPに比べType66のばらつきが有意に大きくなり,Type77に比べType66とType47のばらつきが有意に大きくなった.
結論:前後の咬合支持を削除することにより,被験者によっては下顎頭位の前後的な安定性が減少することが示唆された.各咬合支持条件における下顎頭の変位量,変位方向は個人差が大きく,どのような咬合接触が適切であるかについては明確な結論は得られなかった.