下顎位や咬合接触は,歯や歯列,顎関節,咀嚼筋群,神経系の各要素により決定されるため,咬合異常の中には歯や歯列以外の要素の異常に起因したものが含まれる.顎関節の形態変化に継発する咬合異常は,骨の変形などで下顎頭が上方へ偏位し,前方歯列の開咬を呈する群と,滑液の貯留や浮腫など何らかの原因で顎関節隙が拡大し,上下臼歯部が離開した状態を呈する群に大別される.筋の異常緊張に伴う二次的な咬合異常では,緊張した筋の部位によりさまざまなパターンの顎位変化とそれに伴う早期接触や非接触,咬合位の不安定化が起こり得る.日常の補綴臨床では,これらの顎関節の形態変化や咀嚼筋障害に起因する二次的咬合異常が存在し得ることを踏まえ,顎関節や筋の異常の有無,病態の的確な把握を行った上で咬合異常に対する治療計画を立てる必要がある.