2019 年 11 巻 2 号 p. 151-154
症例の概要:患者は89歳の女性で,右側上顎歯肉癌摘出後,創部の形態変化に伴う義歯不適合と審美障害を主訴に来院した.治療用義歯から,印象域,リップサポートを決定した.床形態と排列位置は上顎右側のニュートラルゾーンから決定し,義歯を新製した.
考察:治療用義歯の調整とニュートラルゾーンから義歯の形態をデザインし,機能時の安定を図った.さらに咬合時の側方力の抑制を図った.義歯形態と咬合の両面について十分な配慮を行うことが満足度の高い治療につながったと考えられる.
結論:上顎歯肉癌術後の患者に対し,術後の口腔内形態に調和した顎補綴治療を行い,患者のQOL向上に寄与することができた.