日本補綴歯科学会誌
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Print ISSN : 1883-4426
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原著論文 ◆Secondary Publication
補綴歯科治療の難易度を測定するプロトコルの妥当性の検討
─(公社)日本補綴歯科学会による多施設臨床研究─
窪木 拓男市川 哲雄馬場 一美藤澤 政紀佐藤 博信會田 英紀小山 重人秀島 雅之佐藤 裕二和気裕之大野(木村) 彩永尾 寛上田(小平) 順加玉置 勝司貞森 紳丞津賀 一弘西 恭宏澤瀬 隆越野 寿鱒見 進一櫻井 薫石橋 寛二大山 喬史赤川 安正平井 敏博佐々木 啓一古谷野 潔矢谷 博文松村 英雄
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2019 年 11 巻 4 号 p. 355-375

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抄録

目的:日本補綴歯科学会は,補綴歯科治療を必要とする患者の複雑な多様性を評価し,それをもとに難易度分類を行うことを目的に「補綴歯科治療の難易度を測定する多軸診断プロトコル」を作成し,すでに臨床上十分な信頼性を示すことを確認した.本研究では多施設臨床追跡研究により本プロトコルの妥当性を検討した.

方法:新たに作成した多軸診断プロトコルは,口腔内の状態,身体社会的状態,口腔関連QOL(OHIP-J54),精神心理学的状態の4つの診断軸からなる.それぞれグレード0(易しい)から3(難しい)の4段階評価を行う.

 日本補綴歯科学会の認定研修施設である大学病院補綴科9施設で,歯質もしくは歯列欠損に対し補綴歯科治療が必要と判断された初診患者を連続サンプリングした.補綴歯科治療前に,本プロトコルを用いて難易度評価を行った.そして補綴歯科治療後に,治療に要した時間,医療費などの医療資源および口腔関連QOL 評価を行った.

 本プロトコルの構成概念妥当性は,治療前の術者の主観による難易度評価と,本プロトコルの各軸の難易度の相関を求め検討した.予測妥当性は,総医療費,総治療時間,治療前後の口腔関連QOL 変化量をサロゲートエンドポイントとして用い,本プロトコルの4つの診断軸の難易度を統合した総合難易度との相関を求めた.

結果と考察:口腔内の状態(Axis Ⅰ),身体社会的状態(Axis Ⅱ),口腔関連QOL(Axis Ⅲ)と治療前の術者の主観による難易度評価は,有意な正の相関を示した.一方,精神心理学的状態(Axis Ⅳ)と治療前の術者の主観による難易度評価には相関が認められなかった.

 術前に本プロトコルで評価した患者の総合難易度は,治療の難易度とよく関連すると考えられるサロゲートエンドポイント(総治療費,総治療時間,口腔関連QOL 改善量)のいずれとも有意に相関した.口腔内状況別にこの関係を精査すると,術前の総合難易度評価は,全部歯列欠損症例や部分歯列欠損症例においては,これらのサロゲートエンドポイントの一部と有意に相関が認められたが,全部歯列欠損と部分歯列欠損の混合症例や歯の問題の症例においては,それらのサンプルサイズが小さいこともあり有意差が認められなかった.

結論:補綴歯科治療の難易度を初めて多軸診断することに成功した本プロトコルの総合難易度評価は,全部歯列欠損症例や部分歯列欠損においては,臨床使用上十分な予測妥当性を示すことがわかった.

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© 2019 公益社団法人日本補綴歯科学会
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