日本補綴歯科学会誌
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原著論文
口腔機能低下症診断の各検査項目と口腔関連QOLの関連
古玉 明日香野川 敏史岩田 航山田 怜高山 芳幸横山 敦郎
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2019 年 11 巻 4 号 p. 391-398

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抄録

目的:食環境や口腔機能における初期の虚弱兆候の4つのフェーズとQOLには関係があると報告されているが,口腔機能低下症の検査項目と口腔関連QOLの関連については詳細には検討されていない.本研究では,地域住民における口腔機能低下症の罹患状況を調査し,その口腔関連QOLへの影響を検討した.

方法:北海道札幌市厚別区役所が主催した「あつべつ健康・福祉フェスタ」に参加し,本研究の実施に同意した65歳以上の者を対象とした.口腔機能低下症の診断に用いられる検査のうち5種を行い,OHIP-14によって口腔関連QOLを評価した.OHIP-14と各変数の比較には,Wilcoxonの検定またはKruskal-Wallisの検定を用い,多重比較にはSteel-Dwassの検定を用いた.口腔機能低下を認めた検査項目数とOHIP-14スコアでSpearmanの順位相関係数を求めた.また,ロジスティック回帰分析により各検査のOHIP-14に対するオッズ比を求めた.

結果:OHIP-14スコアは,残存歯数が20歯未満の者で有意に高かった.被験者の18%が検査項目の3項目以上に該当し口腔機能低下症と診断され,口腔機能低下の項目数とOHIP-14スコアに有意な相関を認めた.さらに,残存歯数と嚥下機能がOHIP-14スコアに有意に関連する因子となった.

結論:自立した地域住民において18%の被験者が口腔機能低下症と診断され,残存歯数および嚥下機能とOHIP-14スコアに関連があることが示された.さらに,口腔機能低下症の診断項目の該当する数が増えるに伴い,口腔関連QOLが低下する可能性が示唆された.

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© 2019 公益社団法人日本補綴歯科学会
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