2019 年 11 巻 4 号 p. 411-414
症例の概要:57歳の男性,主訴は下顎全部床義歯不安定による咀嚼困難であった.下顎の顎堤吸収は著しく,また義歯床縁が短いため,辺縁封鎖の不良による維持力の低下が疑われた.そこで,新義歯製作においては,床縁の位置と形態に留意し,頰粘膜と舌の可動域を視診と触診にて確認し,閉口状態で患者自身の口腔周囲筋や舌の動きを利用した印象採得を行った.
考察:旧義歯より得られた情報を踏まえ,閉口機能印象を行うことで,舌や口腔周囲筋の機能を反映した辺縁形態を付与することができ,良好な結果となったと考えられる.
結論:高度顎堤吸収無歯顎症例において,適切な床縁形態の設定と閉口印象は維持安定の改善に有効であった.