日本補綴歯科学会誌
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原著論文
ポストの接着時におけるレジンセメントの手技別の気泡混入率および接着力の評価
山崎 裕太河村 篤志高嶋 真樹子荒井 良明
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2020 年 12 巻 3 号 p. 264-271

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抄録

目的:失活歯の予後調査では,築造体の脱離が経過不良の多くを占めることが報告されているが,脱離は多因子性に発生していることから原因の解明は難しい.われわれは脱離した築造体表面のセメント表層に気泡様の欠損が観察されたことに着目し,気泡混入が接着力へ及ぼす影響について検討した.

方法:気泡混入評価として,根管充塡を施した透明樹脂根管模型にポスト孔を形成し,既製ポストと接着性レジンセメントを用いて接着した.接着は,使用器具3種類とセメント塗布部位3種類の組み合わせで9条件とし,画像解析にてセメントの気泡混入率および部位別の気泡混入率を評価した.また接着力試験として,牛歯に使用器具3条件で同様の手順で既製ポストを接着した試料を1 mm厚で横切断し,打ち抜き試験による評価を行った.

結果:気泡混入率は,プラスチックニードルを使用しポストと根管にセメントを塗布した条件で有意に低くなった.また,気泡はポスト根尖側に集中している様相が観察された.打ち抜き接着力試験においては,ブラシ使用時にポスト根尖側で接着力の有意な低下を認めたが,他の器具では部位別の接着力に有意差は認めなかった.

結論:気泡による非接着面の存在が接着力の低下を引き起こす原因の1つと考えられた.ポスト孔の最深部に届く器具を用いることで,気泡混入率を低下させ高い接着力を得られることが可能と考えられた.

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