日本補綴歯科学会誌
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原著論文
歯科治療時の体位と頭位の変化が顆頭点の偏位に及ぼす影響
太田 桂資小出 馨佐藤 利英石井 麻水
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2020 年 12 巻 3 号 p. 272-279

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抄録

目的:歯科治療時の患者体位と頭位が,顆頭位に及ぼす影響についてはいまだ不明な点が多い.本研究では,歯科治療時における体位と頭位の前後的変化が顆頭位に及ぼす影響を明らかにする目的で,タッピング運動時の顆頭点の前後的変化ならびに上下的偏位量を測定した.

方法:顎口腔系に機能異常を認めない健常者8名とした.被験者には,体位(基準位から50,60,70,80度後方傾斜)と頭位(基準位から10度後屈,0,10,20度前屈)をそれぞれ設定してタッピング運動を行った際の,左側顆頭点の前後的ならびに上下的偏位量を測定した.基準位は,体位0度,頭位0度とした.測定基準平面はフランクフルト平面,顆頭位測定点はBeyron’s pointとし,測定には改良を加えた三次元6自由度顎運動測定装置を用いた.

結果:頭位の前後方向への変化が顆頭位に及ぼす影響については,前屈により顆頭は前方へ偏位し,頭位0度と頭位10度前屈,頭位0度と頭位20度前屈,頭位10度後屈と20度前屈で有意差が認められた.また上下方向では,頭位10度前屈と頭位20度前屈間,頭位0度と頭位20度前屈間,頭位10度後屈と頭位10度前屈間,頭位10度後屈と頭位20度前屈間でそれぞれ有意差が認められた.体位の変化が顆頭位に及ぼす影響は少なかった.

結論:歯科治療時においては,体位と頭位の変化が顆頭点の偏位に影響を及ぼす可能性があり,咬合に関与する治療時には患者の体位と頭位,特に頭位に対しては十分注意する必要があることが示唆された.

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© 2020 公益社団法人日本補綴歯科学会
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