日本補綴歯科学会誌
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症例報告
下顎頭部腫瘍切除後に生じた開咬症例に対し行った補綴治療
奥村 暢旦荒井 良明河村 篤志長谷川 真奈小松 万記原 さやか髙木 律男藤井 規孝
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2020 年 12 巻 4 号 p. 337-343

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抄録

症例の概要:患者は57歳の女性.下顎の右側偏位と顔貌の非対称による審美障害を主訴に来院した.右側下顎頭骨軟骨腫の診断にて右側下顎頭切除術施行後に右側第二小臼歯から左側第二大臼歯までの広範囲な開咬が生じたため,プロビジョナルレストレーションを装着し,開咬の改善と安定する顎位を長期間にわたり検討した.下顎位が安定し,顎関節症状が生じないこと,良好な顎運動を行えること,咀嚼と審美性に支障が無いことを確認した後に最終補綴治療を行った.

考察:下顎頭骨軟骨腫は比較的緩慢な経過をたどる良性腫瘍であり,本症例も顔貌の非対称を自覚するまでに長期間を要した.この間に行われた補綴治療は,右側下顎頭が過形成した状態で製作されたと考えられる.今回右側下顎頭部腫瘍切除によって,腫瘍により右側に偏位した咬合関係で補綴され,歯冠長の大きな右側臼歯部補綴装置のみが早期接触した結果,その他の部位に広範囲な開咬が生じたと考えられた.

結論:下顎頭切除後に生じた広範囲な開咬に対して,プロビジョナルレストレーションを用いて慎重に経過を確認することで,顎関節や咀嚼筋,新たな咬合に適応した下顎位が得られ,最終補綴装置の装着が可能となった.下顎頭切除後の口腔リハビリテーションにおいては,術後の顎関節や咀嚼筋の安定には数か月から1年ほどの期間を要する可能性が高く,顎位の3次元的な計時的変化に応じた慎重な補綴介入の重要性が示唆された.

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