2020 年 12 巻 4 号 p. 344-347
症例の概要:初診時22歳の女性.上顎義歯の維持不良と鼻腔への水の漏出を主訴に来院.口唇口蓋裂の既往があり,初診時に使用していた義歯は,支持・把持・維持が不足し,残遺孔部の封鎖は不十分であった.そのため,エーカースクラスプおよび鋳造双子鉤を設定した栓塞子つきの上顎義歯を製作した.
考察:栓塞子に粘膜調整材を用いた後,レジンに置換し残遺孔を封鎖し,また,優れた支持・把持・維持を発揮する支台装置を設定することで,良好な結果が得られた.
結論:残遺孔を伴う上顎前歯部欠損に対し,残遺孔の良好な封鎖と適切な支台装置の設定により,義歯の支持・把持・維持の不足と鼻腔への水の漏出を改善することができた.