2022 年 14 巻 1 号 p. 61-64
症例の概要:患者は72歳の上下顎無歯顎の女性.装着義歯はなかった.下顎歯肉癌術後上下顎無歯顎による咀嚼障害,構音障害,審美障害と診断し,通法どおりの治療ステップで全部床義歯による治療を行った.
考察:本症例では,下顎歯肉癌術後の顎堤の支持域は不足していたが,下顎義歯の安定を優先し,床縁,研磨面形態,人工歯排列を考慮し,安定を阻害する因子を排除できたことで,主観的にも客観的にも高い患者満足度を得ることができたと考える.
結論:残存組織を活用し術後の口腔内の形態に調和した全部床義歯による顎補綴治療を行い,機能的にも審美的にも改善を認め,患者のQOL向上に寄与することができた.