2022 年 14 巻 1 号 p. 93-96
症例の概要:73歳の女性,全部床義歯の脱離により食事が困難であることを主訴に来院した.使用中の義歯は過小であり,口腔内所見としては舌の肥大および頰粘膜の内側への突出が認められた.フレンジ法および天然歯列に準じた人工歯排列により新製した全部床義歯を装着した.
考察:舌および口腔周囲筋の機能と調和した義歯床研磨面形態の設定ならびに人工歯排列を行うことで義歯の安定に寄与し,良好な予後をもたらしたものと推察された.
結論:舌および口腔周囲筋の肥大を伴う無歯顎患者における補綴治療において,フレンジ法および天然歯列を考慮した人工歯排列により新製した全部床義歯は,咀嚼機能の回復および維持に有効であった.