2022 年 14 巻 2 号 p. 150-157
目的:総義歯製作の人工歯排列に応用可能な水平的アーチを決定することを目的とし,正常咬合の天然歯列弓形状を参考に,総義歯における平均的人工歯列弓形状の表現法を統計学的に検討した.
方法:研究対象は,下顎総義歯人工歯列および下顎正常天然歯列とした.無歯顎の下顎臼歯部歯槽堤頰舌側の床外形線のほぼ中央に,下顎臼歯人工歯の中央溝が一致するように,人工歯排列を行った.下顎総義歯人工歯列および下顎正常天然歯列に計測点を水平面上で設定し,平均的なアーチを形成する近似曲線を算出した.また,総義歯人工歯の位置について妥当性を確認するため,正常天然歯と各抽出計測点の平均座標値について検討した.
結果:抽出計測点の平均座標値から近似曲線で表現した総義歯人工歯列の平均的人工歯列弓形状および正常天然歯列の平均的歯列弓形状を,統計的に分析した結果,両群における計測点の左右的位置について,近似性が認められた.また,総義歯人工歯列の水平面的アーチを示す平均的人工歯列弓形状は,多項式回帰分析により回帰式で算出され,相関性の高い四次多項式曲線として表現された.
結論:総義歯の平均的人工歯列弓形状から,水平面的アーチを決定することができた.水平面的アーチは,総義歯製作の人工歯排列を簡略化する平均的アーチとなり,これを考慮した個々の人工歯の排列や,本アーチを基準にした連結型人工歯の新たな開発など,臨床的な有用性が期待できる.