日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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ISSN-L : 1883-4426
14 巻, 2 号
令和4年4月
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第130回記念学術大会/メインシンポジウム1 「審美修復材料を極めるー基礎から臨床まで」
  • 峯 篤史, 松本 真理子, 伴 晋太朗, 矢谷 博文
    原稿種別: 依頼論文
    2022 年14 巻2 号 p. 115-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

     CAD/CAMレジン冠が保険導入されて8年をむかえようとしている.この間,本治療法の向上のために日本補綴歯科学会会員は,基礎研究データおよび臨床エビデンスを蓄積してきた.本稿ではその成果である「現在推奨されている接着技法」,「全臨床アウトカム」をまとめ,それらの最新情報から導かれる「具体的な臨床術式」および「患者説明のあるべき姿」を提案する.CAD/CAMレジン冠の治療を成功させる要素は多岐にわたり,歯科医はこれらを総合的にマネージメントする必要がある.さらに,新規メタルフリー治療として日本からの発信を達成するために刷新すべきドグマや臨産官学民連携について吟味したい.

  • 猪越 正直, 水口 俊介
    原稿種別: 依頼論文
    2022 年14 巻2 号 p. 124-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

     近年,ジルコニアは補綴歯科治療において欠かせない材料となっており,陶材焼付鋳造冠に代わるゴールデンスタンダードとなりつつある.特に高透光型ジルコニアが上市されて以来,モノリシックジルコニア製補綴装置が製作可能となり,さまざまな部位に臨床応用されてきている.一方で,上市されてからの歴史が比較的浅いジルコニアは,材料に関するエビデンスも日進月歩であり,常に情報をアップデートする必要がある.本論文では,近年使用されているさまざまなジルコニアについて,1)ジルコニアの種類と分類,2)ジルコニアの焼成,3)ジルコニアの付加製造,4)ジルコニアの接着という4つの観点から現時点でのエビデンスを整理し,解説する.

  • 大谷 一紀
    原稿種別: 依頼論文
    2022 年14 巻2 号 p. 131-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

     1歯欠損の補綴治療においてインプラントは非常に有用な治療法ではあるが,さまざまな事情でインプラント以外の治療法を選択される患者は少なくない.そのため,ブリッジやパーシャルデンチャーによる治療は,いまだ欠くことのできない補綴オプションの一つである.前歯部1歯欠損症例では,パーシャルデンチャーは審美的に受け入れられがたく,従来型ブリッジが選択されることが多いが,健全歯の支台歯形成が必要になる.そしてこれに抗するべく,最小限の歯質削除量で修復が可能な接着ブリッジが古くから提案されてきた.本稿ではジルコニアセラミックを用いたシングルリテーナー接着ブリッジの臨床における注意点について解説する.

◆企画:令和3年度九州支部学術大会/特別講演2 「補綴学教室におけるベーシックリサーチ」
◆企画:令和3年度九州支部学術大会/生涯学習公開セミナー  「基礎から学ぶ審美補綴~安定した予後をえるために必要なこと~」
  • 日高 豊彦, 日高 亨彦, 高橋 和也
    原稿種別: 依頼論文
    2022 年14 巻2 号 p. 144-149
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

     修復材料は生体にとりすべて異物であり,辺縁歯肉縁下に修復材料を設置する必要がある場合歯周組織と歯の関係を考慮する必要がある.生体内の深い位置へ修復物が進入すると,歯周組織を再構築するため周囲組織が根尖側方向へ移動するか,再生能力の高い生体の周囲組織では吸収と再生が繰り返されることにより,軽度の炎症状態が継続すると考えられる.次に患者の歯周組織のバイオタイプ(biotype:生物学的な性質)を診断し考慮する必要がある.過去に報告されたバイオタイプの分類において軟組織が薄いなど審美的変化のリスクが高い症例は結合組織移植等により歯周組織環境を変更できる可能性がある.また,歯冠の豊隆も歯種によりさまざまであり,修復物に与える豊隆は形成限界面の設定位置で形態を変えるべきであると我々は考えている.

原著論文
  • 前畑 香, 小松 俊司, 渡辺 宣孝, 一色 ゆかり, 玉置 勝司
    原稿種別: 研究論文
    2022 年14 巻2 号 p. 150-157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:総義歯製作の人工歯排列に応用可能な水平的アーチを決定することを目的とし,正常咬合の天然歯列弓形状を参考に,総義歯における平均的人工歯列弓形状の表現法を統計学的に検討した.

    方法:研究対象は,下顎総義歯人工歯列および下顎正常天然歯列とした.無歯顎の下顎臼歯部歯槽堤頰舌側の床外形線のほぼ中央に,下顎臼歯人工歯の中央溝が一致するように,人工歯排列を行った.下顎総義歯人工歯列および下顎正常天然歯列に計測点を水平面上で設定し,平均的なアーチを形成する近似曲線を算出した.また,総義歯人工歯の位置について妥当性を確認するため,正常天然歯と各抽出計測点の平均座標値について検討した.

    結果:抽出計測点の平均座標値から近似曲線で表現した総義歯人工歯列の平均的人工歯列弓形状および正常天然歯列の平均的歯列弓形状を,統計的に分析した結果,両群における計測点の左右的位置について,近似性が認められた.また,総義歯人工歯列の水平面的アーチを示す平均的人工歯列弓形状は,多項式回帰分析により回帰式で算出され,相関性の高い四次多項式曲線として表現された.

    結論:総義歯の平均的人工歯列弓形状から,水平面的アーチを決定することができた.水平面的アーチは,総義歯製作の人工歯排列を簡略化する平均的アーチとなり,これを考慮した個々の人工歯の排列や,本アーチを基準にした連結型人工歯の新たな開発など,臨床的な有用性が期待できる.

  • 佐藤 裕二, 古屋 純一, 下平 修
    原稿種別: 研究論文
    2022 年14 巻2 号 p. 158-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:歯冠補綴時色調採得検査,有床義歯咀嚼機能検査,舌圧検査が健康保険に導入された.そこで,2016年以降の補綴関連検査の臨床現場での実施状況を明らかにすることを本研究の目的とした.

    方法:2016から2020年度に行われた社会医療診療行為別調査をもとに,検査の実施件数を調査した.関連する診療行為に対する,歯冠補綴時色調採得検査の割合,顎運動関連検査の割合,有床義歯咀嚼機能検査の割合,舌圧検査の割合を比較した.また,医療技術評価提案の試算と比較検討した.

    結果:歯冠補綴時色調採得検査は前回調査(2018年まで)に比べて微増(8.0%)したが,試算の40%より少なかった.顎運動関連検査は実施率が11%程度で一定であった.有床義歯咀嚼機能検査は2016年にはほとんど無かったが,2018年(1.9%),2020年(2.9%)と増加したが,試算の7.5%より少なかった.舌圧検査は2016年から必要な症例には複数回算定されていたが,試算の12 ~13%であった.2018年からは適応が拡大し,大幅に増加した.

    考察および結論:新規に導入された検査は増加傾向にあった.しかしながら,医療技術提案書で予想された実施率より,少ないことから,今後,普及を図る取り組みを継続するとともに,実施率の継続的な点検評価が必要であることが示唆された.

専門医症例報告
  • 谷本 裕之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 165-168
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は67歳女性で,⻭の動揺による咀嚼困難と上顎前⻭部の審美不良を主訴に来院した.重度⻭周炎のため上顎臼⻭部の抜⻭を行い,⻭周治療を行った.上下顎前⻭部に連結冠を作製し,上顎欠損部に対してはアンレーレストを用いた部分床義⻭を作製した.

    考察:前⻭部に連結冠による一次固定を図ることで支台⻭の動揺を抑えることができ,同時に⻭軸の改善により患者の審美的な満足も得られた.また,機能時に動揺の少ない部分床義⻭を作製することで,咀嚼機能が改善された.

    結論:重度⻭周炎患者に対し,⻭周炎のコントロールと安定した咬合の付与により良好な経過を得た.

  • 濵中 一平
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 169-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は16歳の男性.先天性多数歯欠損による審美不良を主訴に来院した.動的矯正治療を行い,歯間空隙部の封鎖および欠損部のスペースコントロールを行った.確保できたスペースにノンメタルクラスプデンチャーおよび接着ブリッジの装着を行った.

    考察:補綴治療終了後,定期的なメインテナンスへ移行し現在約5年が経過しているが,補綴装置および残存歯は良好に機能している.また審美性においても高い満足を得ることができた.

    結論:先天性多数歯欠損を有する若年患者に対しノンメタルクラスプデンチャーと接着ブリッジの補綴処置により審美性を回復することが可能であることが示唆された.

  • 山口 大輔
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 173-176
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は57歳の女性で,「奥歯で噛めない」との主訴で来院した.臼歯部に咬合支持がなく,閉口時上顎前歯が下顎前歯によって突き上げられている様子が認められた.治療用義歯で咬合支持を回復した後に磁性アタッチメントを用いた最終補綴装置を装着した.

    考察:治療用義歯を用いて咬合平面と咬合位の再構成を行うことで咀嚼機能および審美障害の改善を図ることができたと考えられる.

    結論:治療用義歯で得られた情報を最終補綴装置に移行することで長期的な予後を確保できた.また磁性アタッチメントを用いたことで患者満足度の高い治療となった.

  • 増田 学
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 177-180
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:初診時60歳女性.上下顎残存歯の動揺,咀嚼時の顎の痛みによる咀嚼困難および審美不良を主訴に来院した.検査の結果,前歯部補綴装置脱離による審美障害,重度辺縁性歯周炎および顎関節症による咀嚼障害と診断した.

    考察:補綴歯科治療前に顎関節症を改善し,再発を防止した.その後口腔機能の回復のために治療用義歯および最終義歯による安定した咬合を確立し,適切な咬合機能を回復したことが良好な長期予後に繋がったと考えられる.

    結論:顎関節症に対する継続した管理,治療用義歯による機能的に問題の生じない下顎位を探索し最終補綴装置製作に反映させることで,咀嚼障害および審美障害を改善し,良好な予後および患者の高い満足を得ることができた.

  • 白石 成
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 181-184
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:65歳の女性.上顎右側の歯肉癌に対する上顎部分切除術予定となり,術後の顎義歯製作を目的に当科初診となった.術後,上顎洞との交通を伴う片側性の顎欠損による咀嚼障害および審美障害が認められた.治療用顎義歯にて粘膜の変化に追従した塞栓子の調整を行い,ろう孔が閉鎖後に最終顎義歯を装着した.

    考察:顎堤の頰側に位置する上顎洞との交通部は,顎義歯の沈下や動揺に対応し,閉鎖する可能性を考慮した調整を行うことが重要であると考えられた.

    結論:口腔外科との連携により,術直後の閉鎖床,早期の治療用顎義歯,最終顎義歯による歯科的リハビリテーションが可能となり,審美,咀嚼能力と口腔関連QOLの改善に寄与した.

  • 井戸川 香代
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 185-188
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:78歳女性.下顎総義歯の動揺による咀嚼不良を主訴に来院した.下顎の顎堤吸収は著しく,下顎総義歯は維持・安定が得られていなかった.高度な下顎顎堤吸収による義歯の維持不良に起因する咀嚼障害と診断し,インプラントオーバーデンチャー(IOD)による補綴治療を行った.

    考察:本症例はバーアタッチメントを選択し,義歯装着後の粘膜の沈下を考慮して咬合圧印象を行ったことで,インプラント体への負担軽減と機能時の粘膜面の適合性向上につながり,長期的な良好な経過が得られたと考えられる.

    結論:著しい顎堤吸収を有する下顎無歯顎患者に対してIODによる補綴治療を行い,良好な結果が得られた.

  • 平林 里大
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 189-192
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:56歳の男性,臼歯部の齲蝕による咀嚼困難を主訴に来院した.右側歯列は犬歯を含む反対咬合であったが,患者希望から臼歯部のみ補綴治療を行った.プロビジョナルレストレーションの右側の咬合様式は,臼歯部のみのグループファンクションとした.9カ月後,機能的咬合印象法を用いて,プロビジョナルレストレーションの咬合面を補綴装置に再現した.

    考察:長期経過後のプロビジョナルレストレーションの咬合面を最終補綴装置に再現し,臼歯部の側方圧を分散したことで安定した咬合関係を維持できた.

    結論:犬歯を含む反対咬合症例に対して,臼歯部のみのグループファンクションとすることは安定した咬合関係の維持に有効であった.

  • 上窪 祐基
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 193-196
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:79歳の女性,歯肉の腫脹と疼痛を主訴に来院した.診断の結果,保存不可の歯を抜歯し,旧義歯の修正と歯周基本治療を行った.対合にインプラントを含むため,強度を考慮した金属床義歯を設計し,補綴前処置として支台歯に歯冠修復を行い,金属床義歯を装着した.

    考察:義歯の動揺の減少を目的に,支台装置の連結強度を高めた金属床義歯による補綴治療を行った.その結果,適切な支持・把持・維持と強度が得られ,咬合力分散と歯軸方向への伝達が可能となり,良好な予後を得ることができた.

    結論:対合にインプラントを含む本症例は,連結強度を高めた最終補綴装置の装着により,咀嚼能力を改善させることができた.

  • 長谷 英明
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 197-200
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:79歳女性.下顎全部床義歯の不備による咀嚼障害を主訴に来院した.上顎は両側遊離端の部分床義歯が装着されており,パノラマX線写真にて右側下顎頭の欠損を認めた.下顎は無歯顎で顎堤の吸収が著しく,上下顎顎堤の対向関係に不調和を呈していた.

    考察:右側下顎頭欠損に起因する下顎の右側偏位が下顎全部床義歯に維持の低下をもたらしていると判断し,治療用義歯製作時にピエゾグラフィを行った.筋圧中立帯内に人工歯排列と義歯床研磨面形態を設定することにより下顎全部床義歯の維持が向上したと考えられる.

    結論:人工歯排列位置および研磨面形態に留意して義歯作製を行うことが,義歯の維持安定に有効であった.

  • 仲西 和代
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 201-204
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は53歳男性.上顎義歯破折による咀嚼困難を主訴に来院した.嘔吐反射により歯科治療が困難であったため,必要に応じて鎮静法もしくは全身麻酔下でインプラント治療を含む固定性欠損補綴治療を行った.患者は審美的,機能的に改善された治療結果に満足した.

    考察:患者は鎮静法もしくは全身麻酔下で苦痛のない歯科治療を経験し,著しい嘔吐反射により歯科治療をためらっていた患者の歯科治療への積極性を向上させたものと考えられる.

    結論:著しい嘔吐反射を有する治療困難患者に対するインプラント支持の固定性補綴装置による補綴治療において,鎮静法もしくは全身麻酔の併用は有効であった.

  • 小島 規永
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 205-208
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:73歳男性.舌接触補助床の製作のために,手術担当医より依頼され来院した.舌癌に対して舌部分切除術,中咽頭癌に対して中咽頭切除術後に大腿筋皮弁再建が施行されていた.患者は無歯顎であったため咀嚼障害と嚥下障害の改善のために,摂食機能訓練と全部床義歯と一体型の舌接触補助床の製作を行った.

    考察:最終義歯装着後から3年以上が経過している.補綴歯科治療と摂食嚥下訓練を行ったことにより,咀嚼・嚥下をはじめとする口腔機能が改善され,PAP部分の形態を徐々に調整し,通常の口蓋形態の義歯へ移行することができた.

    結論:補綴歯科治療のみならず摂食機能訓練を行ったことにより,咀嚼・嚥下をはじめとする口腔機能が改善された.

  • 谷口 祐介
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 209-212
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は64歳女性.上顎前歯部欠損と下顎両側遊離端欠損による咀嚼障害を主訴に来院した.咬合平面の不整や咬合崩壊を認め,これらを改善するために,上下顎欠損部のインプラント補綴を伴う咬合再構成を行った.

    考察:インプラント固定性補綴歯科治療により咀嚼機能が向上した.最終補綴装置装着後約4年経過したが,全顎的な補綴処置を行うことによって咬合の安定が図られたことと継続的なメインテナンスによって残存歯ならびにインプラント部が経年的に維持できたと考えられた.

    結論:本症例では,欠損部のインプラント補綴と残存歯の歯冠修復による咬合挙上を伴う咬合再構成を行ったことで,咀嚼障害が改善された.

  • 楠 尊行
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 213-216
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は70歳の女性.下顎総義歯動揺による食事の困難,上顎総義歯落下による会話困難を主訴として来院した.口腔内検査では上下顎に著しい顎堤吸収を認めた.ピエゾグラフィを用いて,上下顎総義歯による補綴処置を行い口腔機能の回復を図った.

    考察:ピエゾグラフィを用いることで,口腔周囲筋や舌運動と調和した位置への人工歯排列と機能的な義歯床研磨面形態を付与した総義歯を作製することができ,口腔機能の回復が得られたと考えられる.

    結論:高度顎堤吸収を伴う患者に対して,ピエゾグラフィを用いて総義歯を作製することで,患者の満足を得ることができた.

  • 大森 哲
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 217-220
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:65歳男性.前歯部ブリッジの動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.咬合平面の不正および咬耗による咬合高径の低下を認めた.咬耗および臼歯部欠損による咀嚼障害と診断した.咬合高径の評価後にプロビジョナルレストレーション・治療用義歯を用い咬合挙上,咬合平面の修正を行い,クラウン,ブリッジおよび部分床義歯を製作した.

    考察:咬合再構成により,審美性の回復および咀嚼能力の改善を認め,口腔関連QoL(Quality of Life)は向上し,高い満足度を得ることができた.

    結論:咬合平面の不正および咬耗による咬合高径低下を伴う患者に対して,咬合再構成を行うことで良好な結果を得ることができた.

  • 葭矢 啓介
    原稿種別: 症例報告
    2022 年14 巻2 号 p. 221-224
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は54歳男性.奥歯がなくて食事がしにくいことを主訴で来院した.臼歯での咬合支持が左側第一小臼歯のみであった.咬合支持をインプラントやブリッジにて回復し,咬合平面の乱れを改善し臼歯離開咬合が得られ干渉が生じないように最終補綴装置を装着した.

    考察:咀嚼障害の改善とともに,咬合平面の乱れを改善することは干渉や早期接触のリスクを軽減することができ,補綴装置や天然歯の長期的安定を考慮した治療を行うことができると考える.

    結論:臼歯の遊離端欠損症例において,インプラントを含む補綴治療を行い咀嚼障害と咬合平面の乱れを改善し4年6カ月にわたり良好な経過を得ている.

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