2022 年 14 巻 3 号 p. 305-308
症例の概要:患者は 54歳女性.上顎前歯部の動揺と疼痛による咀嚼障害を主訴に来院した.咬合平面の不整,臼歯部咬合支持域の低下および下顎運動の制限を認めた.ゴシックアーチ描記法による下顎運動の客観的評価を治療の段階ごとに行い,下顎運動の改善後に,プロビジョナルレストレーションの咬合と形態を移行した上顎クロスアーチブリッジの装着を含む咬合再構成を行った.
考察:下顎運動の改善と咬頭嵌合位の安定を得たことが,最終補綴装置の長期の安定をもたらしたと考える.咬合再構成時は,術者と患者の主観的評価だけでなく客観的評価が重要と考えられる.
結論:咬合再構成時の下顎運動の客観的評価としてゴシックアーチ描記法は有効である.