2023 年 15 巻 1 号 p. 85-88
症例の概要:患者は67歳男性で,左側上顎洞癌により同部切除および術後放射線治療を受けたが,晩期障害として開口障害が残存し,咀嚼困難を訴えていた.開口時における十分な上下顎歯間距離を確保することを目的とし,残存歯の抜髄および歯冠補綴処置により咬合平面および咬合高径を修正したうえで,上顎顎義歯および下顎部分床義歯を製作した.
考察:本症例では,計画的な補綴前処置によって開口時における上下顎歯間距離を確保できたことで,十分な咀嚼が可能になり,良好な結果が得られたと考えられる.
結論:開口障害に対して適切な補綴前処置を行ったうえで義歯を製作したことにより咀嚼機能が回復し,患者の高い満足度が得られた.