2023 年 15 巻 3 号 p. 275-280
要介護高齢者の欠損補綴では,有床義歯が選択されることが多い.多数歯欠損を補綴治療することで,咀嚼機能のみならず,嚥下機能の改善も期待される.一方で,ポリファーマシーや,認知症に起因する摂食嚥下機能障害は,有床義歯のみでは改善できないことから,一全身単位での治療のゴールを考えることが不可欠である.
要介護の原因疾患である認知症や脳血管疾患の状況に応じて,治療的アプローチと代償的アプローチのバランスをとることも要求される.また,要介護高齢者とその家族の精神的・経済的負担を考慮した対応も必要であろう.最後に,義歯新製後の指導にとどまらない,咀嚼や構音機能のリハビリテーション実施についても提言する.