日本補綴歯科学会誌
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ISSN-L : 1883-4426
15 巻, 3 号
令和5年7月
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:令和4年度関西支部学術大会/生涯学習公開セミナー「全部床義歯の咬合採得を失敗しないための7つのポイント」
  • 松田 謙一
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

     全部床義歯臨床において,咬合採得は非常に重要なステップであり,どんなに印象が上手く採得できたとしても,咬合採得を誤ると全く機能しない義歯となってしまう可能性が高い.そのため全部床義歯臨床を成功へ導くという観点で見れば,咬合採得,顎間関係記録こそ最も重要なステップであることは間違いない.そして,その重要性にも関わらず,非常に難しいステップであり,若手歯科医師が全部床義歯を苦手と感じる大きな原因となっていると考えられる.

     そこで本依頼論文では,全部床義歯の咬合採得を成功させるために押さえておきたいポイントを解説したい.

◆企画:令和4年度東北・北海道支部学術大会/シンポジウム「要介護高齢者における補綴診療の目標設定を考える」
  • 鈴木 史彦
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

     要介護高齢者の欠損補綴では,有床義歯が選択されることが多い.多数歯欠損を補綴治療することで,咀嚼機能のみならず,嚥下機能の改善も期待される.一方で,ポリファーマシーや,認知症に起因する摂食嚥下機能障害は,有床義歯のみでは改善できないことから,一全身単位での治療のゴールを考えることが不可欠である.

     要介護の原因疾患である認知症や脳血管疾患の状況に応じて,治療的アプローチと代償的アプローチのバランスをとることも要求される.また,要介護高齢者とその家族の精神的・経済的負担を考慮した対応も必要であろう.最後に,義歯新製後の指導にとどまらない,咀嚼や構音機能のリハビリテーション実施についても提言する.

  • 川西 克弥, 會田 英紀, 富田 侑希, 村田 幸枝, 豊下 祥史, 越野 寿, 長澤 敏行
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 3 号 p. 281-287
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

     歯科訪問診療における有床義歯補綴診療では,要介護高齢者の身体的・精神的問題や意思疎通の難しさなどから印象採得と咬合採得が困難であることをよく経験する.そのため,補綴治療介入の判断基準として,開口状態や咬合状態の保持の可否を重要視している.また,治療のタイミングを見極めることや介護者が同席することで治療がスムーズに遂行できることもあり,キーパーソンとのコミュニケーションや他職種との連携は治療の成否に大きく影響していると考える.

     本稿では,筆者が経験した歯科訪問診療での有床義歯補綴診療の症例を紹介するとともに,要介護高齢者に対する補綴診療の目標設定について述べる.

  • 山口 哲史
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 3 号 p. 288-293
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

     要介護高齢者に対する補綴治療において,特に患者が重度の認知症である場合,その同意は家族の代諾によってなされることが多く,本来最も重視されるべき本人の意思ではなく,家族の願望や,医療者の倫理観が優先される懸念がある.このような葛藤に対して倫理的視点から決断を行うための実学として「臨床倫理学」があり,すべての重要な関係者に適切な情報の提供と説明がなされたうえで,本人の推定意思を尊重した意思決定を行うことが推奨されている.そのためには,まず偏りのない正しい情報を関係者へ伝達することが必要である.本稿では,要介護高齢者に対する補綴診療を行ううえで倫理的に適切な情報提供や意思決定のあり方について考えたい.

◆企画:令和4年度九州支部学術大会/生涯学習公開セミナー「全部床義歯の咀嚼機能と吸着のために必要なこと」
  • 佐藤 勝史
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 3 号 p. 294-300
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

     現在,インンプラント治療は確立されているが,経済的な問題や全身疾患により手術が困難なことなどのため,全部床義歯の需要は依然として多い.

     臨床では,歯周病治療の進歩,無歯顎になる年齢の遅延,平均寿命の延伸等の要因により,顕著な高度顎堤吸収症例が年々増加しているように見受けられる.高度顎堤吸収症例では,口腔内の諸条件が悪化し,スタンダードの製作法では,全部床義歯の吸着および安定を求めることが困難となりやすい.

     そこで今回,下顎無歯顎高度顎堤吸収症例の口腔内の臨床的観察から,その特徴を提示および解説し,そして対処法まで言及したい.

専門医症例報告
  • 髙市 敦士
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 301-304
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:65歳女性.部分床義歯の不備による咀嚼障害および感覚障害を主訴に来院した.下顎は上顎に対して歯列弓が小さく,下顎左側小臼歯 |45 は舌側傾斜により鋏状咬合,前歯部は過蓋咬合を呈していた.上顎にオクルーザルランプを備えた部分床義歯を製作し,義歯床を介した咬合接触の回復をした.

    考察:オクルーザルランプを用いて中心咬合位での左右臼歯部の咬合接触を回復したことで上顎義歯の回転沈下が改善し,咀嚼能力の改善と患者の高い満足度を得ることができた.

    結論:鋏状咬合を伴う過蓋咬合を呈する患者に対してオクルーザルランプを備えた部分床義歯による補綴治療を行うことで良好な結果を得ることができた.

  • 荒木田 俊夫
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 305-308
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:70歳の男性.上下顎補綴装置の不適合を主訴に来院した.下顎残存歯は慢性歯周炎が認められ,臼歯部は動揺があった.歯周治療後,下顎の動揺歯はクロスアーチブリッジを用いた一次固定を行い,下顎臼歯部を支台歯として部分床義歯を製作した.上顎は全部床義歯を製作した.

    考察:下顎残存歯の一次固定により動揺の悪化もなく歯周炎の予後も良好であった.術後の口腔内QOLも改善が認められた.

    結論:下顎歯周炎に対して一次固定で対応したことにより,下顎臼歯部を下顎義歯の支台歯として,リジットサポートによる支持力と把持力を得ることができた.これにより支台歯の良好な予後と,上下義歯の安定による高い満足度も得ることができた.

  • 鈴木 啓之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 309-312
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は53歳の女性.上顎前歯部固定性補綴装置の破損および形態不良に伴う審美不良を主訴に来院した.固定性補綴装置の支台歯である 1| は歯肉縁下に及ぶ二次齲蝕を認めた.齲蝕除去と支台歯形成により歯肉退縮が生じたことから,矯正的挺出を併用し,(6)(5)4(3)(2)(1) | 12(3) の陶材焼付鋳造ブリッジを装着した.

    考察:補綴装置装着4年経過後,著しい歯肉退縮は認めず,患者の高い満足度が得られていることから,良好に経過していると考えられた.

    結論:齲蝕除去および支台歯形成による歯肉退縮を生じた支台歯を,矯正的挺出を行うことで,歯頸部歯肉形態を可及的に左右対称に近づけ,審美性の高い補綴装置装着が可能となった.

  • 萬田 陽介
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 313-316
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:多数歯齲蝕・歯冠崩壊に起因した咬合崩壊による咀嚼障害,および審美障害に対して,治療用義歯を製作し,可能な限り歯牙を保存してコーピングを装着し,上顎は無口蓋形の残根上義歯を製作して良好な予後を得た.

    考察:残存歯の歯根長は齲蝕による歯質欠損により歯冠補綴を行うには不十分であったが,オーバーデンチャーとすることにより歯冠歯根比の改善を図るとともに,多くの歯牙に咬合負担を分散させることが可能となったことで,良好な予後が得られたと考えられる.

    結論:無口蓋義歯症例において,多数歯のコーピングを使用することは歯科における身体的,機能的,精神的障害の改善に有用である.

  • 鈴木 亜沙子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 317-320
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:31歳の女性.舌癌による舌切除と下顎区域切除術の施行後,審美障害を主訴に来院した.残存歯は中心位での咬合接触がなく,舌運動は低下し,咀嚼・嚥下・発音障害を併発していた.下顎顎義歯と舌接触補助床を製作,機能的形態を付与し機能訓練を行った.

    考察:顎義歯の装着により審美性が得られるとともに,咬合が付与されたことで咀嚼サイクルが安定した.舌接触補助床を用いた機能訓練が舌筋や舌骨上筋群を強化し舌圧と舌運動範囲を増大させた.

    結論:顎欠損に対し顎義歯装着が審美・咀嚼障害の改善をもたらした.さらに,舌接触補助床を用いた機能訓練により,舌運動低下に伴った咀嚼・嚥下・発音障害の改善を得た.

  • 佐藤 佳奈美
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 321-324
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:64歳の女性.上顎左側前歯の動揺による疼痛と咬合の不調和および審美不良を主訴に来院した.約1年前から 1| の動揺が気になり始め,来院時には痛みを覚えたという.歯周組織検査およびエックス線検査の結果,咬合性外傷による歯根破折および歯周炎の誘発と咬耗による咬合高径の低下,審美・咀嚼障害と診断した.したがって本症例は,咬耗による咬合高径の低下を咬合挙上により改善し,患者の主訴である審美・咀嚼要害の改善を行った.

    考察:セファロ分析による咬合高径の設定と口腔関連QOL(OHIP-14)・咀嚼能力検査による評価は有効であると考えられる.

    結論:咬合高径の設定にセファロ分析を利用し,良好な結果が得られた.

  • 神田 雄平
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 325-328
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:65歳男性.「食事がしにくい」という主訴で来院した.上顎両側大臼歯欠損で下顎前歯と小臼歯部に著しい咬耗を認めた.補綴前処置後,診断用ワックスアップによって咬合挙上量や咬合様式,咬合平面を検討し暫間補綴装置を装着し,固定性補綴装置および金属床義歯による咬合再構成を行った.

    考察:暫間補綴装置にて咬合挙上量の確認を慎重に行い,クロスマウントテクニックにて最終補綴装置に反映したことによって患者満足度の向上と咀嚼障害を改善できたと考えられる.

    結論:著しい咬耗と欠損に対して,咬合挙上と咬合再構成を行い良好な予後が得られた.

  • 五十嵐 憲太郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 329-332
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:81歳の女性.咀嚼時の上下顎全部床義歯の動揺と疼痛を主訴として来院した.軟質リライン材の劣化および人工歯の咬耗に起因する咬合高径低下・安定不良による咀嚼障害と診断した.無歯顎の症型分類はLevel IIであった.複製義歯を応用した治療用義歯を製作し,最終義歯へ反映する治療計画を立案した.

    考察:複製義歯の応用により装着中の義歯の形態を反映しつつ,必要な形態と機能の付与が可能になり,患者の主訴の改善とQOLの向上に貢献したと考えられる.

    結論:複製義歯を応用した治療用義歯で得られた情報を最終義歯の製作に反映することにより,無歯顎患者の咀嚼障害を改善できた.

  • 添田 ひとみ
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 333-336
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:50歳女性.審美不良を主訴に来院した.主訴の原因は上顎前歯部の歯軸傾斜,変色,齲蝕および小臼歯部の金属冠であった.治療部位が多かったため,5つのブロックに分けて治療を行った.

    考察:咬頭嵌合位の偏位を最小限にできたことで良好な経過につながった.さらに,診断用ワックスアップを用いて治療方針を相談したうえでプロビジョナルレストレーションを修正しながら治療を進めたこと,補綴装置を適切に選択したことで,審美的にも高い満足度を得られた.

    結論:本症例では,上顎前歯部および両側臼歯部の審美障害に対し,ブロックに分けて治療を行うことで,安定した咬頭嵌合位を維持し,審美性の回復と良好な経過が得られた.

  • 鍋島 玄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例概要:74歳男性.上顎右側臼歯部のブリッジの動揺および,義歯の不適合による咀嚼困難を主訴に来院した.重度咬耗による咬合崩壊に対して,固定性補綴装置および部分床義歯を用いた咬合再構成を行った.

    考察:補綴空隙が不足した患者に対して診断用ワックスアップを参考にした咬合挙上を行うことで,適切な咬合を付与することができた.本症例では臼歯部の咬合支持を義歯が担うことになるため,今後の経過観察において顎堤の変化と咬合面の咬耗に対する対応が重要となる.

    結論:重度咬耗により咬合崩壊した患者に対して咬合再構成を行った結果,主観的咀嚼能力および口腔関連QoLが向上し,良好な結果を得ることができた.

  • 瀬戸 宗嗣
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 341-344
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:54歳の女性.咀嚼困難と審美不良を主訴に来院した.酸蝕症による前歯部咬合接触の喪失および天然歯の変色を認めた.検査の結果,酸蝕症による咀嚼障害,テトラサイクリン歯による審美障害と診断した.プロビジョナルレストレーションによりアンテリアガイダンスの確立後,オールセラミッククラウンとポーセレンラミネートベニアによる補綴歯科治療を行った.

    考察:犬歯誘導の咬合様式を付与したプロビジョナルレストレーションを装着しアンテリアガイダンスが確立され,最終補綴装置へ再現できたことで良好な結果が得られたと考える.

    結論:咀嚼障害と,審美障害を呈した症例に対して,機能の回復と審美の改善が適切に行えた.

  • 森口 大輔
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は74歳の男性.前歯の被せ物がとれて,見た目が悪く,発音しにくい,食事が摂りにくいことを主訴に来院した.上顎左側中切歯に歯肉縁下に及ぶ重度歯質欠損を認めた.補綴前処置として歯冠長延長術をした後に歯冠補綴を行った.

    考察:歯冠歯根比に考慮しながらフェルール効果の獲得と生物学的幅径の改善を目的として歯冠長延長術を行うことで,残存歯質を最大限に活用できたと推測される.

    結論:重度歯質欠損を認める上顎前歯部失活歯に対し,フェルール効果を発揮させて残存歯質を力学的に最大限に活用した歯冠補綴を行うことにより,審美障害の改善と顎口腔機能の維持安定を達成することができた.

  • 佐藤 大輔
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 349-352
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:73歳女性.下顎義歯の動揺・疼痛による咀嚼困難と上顎臼歯部の食片圧入を主訴として来院した.下顎義歯不適合による咀嚼障害および上顎大臼歯部歯間離開による食片圧入と診断した.下顎は,治療用義歯として総義歯を製作後,即時荷重のインプラントオーバーデンチャー(IOD)にて下顎義歯の維持・安定の改善を図った.上顎は臼歯部に連結全部鋳造冠を,欠損部に部分床義歯を製作し,下顎にはIODを新製した.

    考察:下顎にIODを適用したことにより,手術直後から義歯の安定が向上し,患者の咀嚼能力が改善した.

    結論:本症例のように顎堤吸収があり,義歯の維持・安定が困難な症例には,IODは有効な治療オプションであると考えられた.

  • 宋本 儒享
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 353-356
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は71歳女性.主訴は下顎全部床義歯床下粘膜の咀嚼時疼痛であり,顎堤吸収が著しかった.新義歯製作において,片側性咬合平衡を確立するために,顎堤上の安定して人工歯が排列できる領域を抽出したオクルーザルマップを作成し,その領域内に重点的に咬合接触点が得られるように人工歯排列を行った.

    考察:オクルーザルマップを用いて,片側性咬合平衡を達成できる人工歯排列を行ったことで,主訴が改善でき良好な結果を得ることができた.

    結論:オクルーザルマップを活用することは,上下顎堤の対向関係を画像としてわかりやすく可視化できるため,難症例における人工歯排列の際の基準として有益であると考えられた.

  • 中井 健人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 357-360
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は57歳女性.上顎左側臼歯部欠損による咀嚼困難を主訴に来院した.歯の挺出と,咬合支持の減少に伴う咬合高径の低下,補綴空隙の減少を認めた.咬合挙上を行った後,上顎にコーヌステレスコープ義歯による欠損部補綴治療を行った.

    考察:コーヌステレスコープ義歯の特性であるリジットサポート,リジットコネクションを実現したことで,口腔内の安定を獲得し,口腔関連QOLの向上に大きく寄与することができたと考えられる.

    結論:咀嚼障害に対して,コーヌステレスコープ義歯を用いた補綴治療により良好な治療結果を得ることができた.

  • 森脇 大善
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 361-364
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は29歳の女性.43| 先天欠如による審美障害を主訴として来院した.着脱や歯質保存の観点からインプラントによる補綴歯科治療を行った.歯間乳頭の再建を目的として調整したプロビジョナルレストレーションの形態を反映した最終上部構造を装着し,治療を終えた.

    考察:インプラント治療により補綴設計が簡略化され,歯質切削によって引き起こされるトラブルも回避できたと考えている.プロビジョナルレストレーションの調整やカスタムインプレッションコーピングの応用が,審美的な経過の獲得に重要であったと考えられる.

    結論:本症例では,インプラント支持固定式補綴装置によって審美的に咬合回復を行うことができた.

  • 桑澤 実希
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 365-368
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は70歳男性.上顎右側骨肉腫の再発で当院を受診し,上顎部分切除術を受けた.術後の顎補綴治療の依頼により,当科を受診した.上顎右側の骨欠損は鼻腔と上顎洞に交通していた.顎欠損による咀嚼障害,構音障害,審美障害と診断した.所持していた旧上顎顎義歯は不適合だった.治療用義歯として修理,調整を行った後に,新顎義歯の製作を行った.

    考察:新顎義歯の形態は,治療用義歯の形状を参考にした.その結果,構音機能,咀嚼機能,審美性が向上し,これにより患者のQOLが向上した.

    結論:顎義歯の形態を口腔周囲筋の運動に調和させることにより,長期的に良好な予後が得られた.

  • 安部 友佳
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 369-372
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は85歳男性.咬耗による前歯部審美不良と咀嚼困難を主訴として来院した.顕著な咬耗と咬合支持喪失に伴う補綴空隙の減少,義歯の不適合が認められた.使用中の上下顎義歯,プロビジョナルレストレーション,暫間義歯を用いて咬合挙上を行った.患者の審美的,機能的な充足を確認したのち,最終補綴装置となるコーヌステレスコープ義歯を装着した.

    考察:類すれ違い咬合を呈する歯列において,リジッドサポートの確立が咀嚼機能の改善と高い患者満足度に寄与したと考えられる.

    結論:コーヌステレスコープ義歯による治療は部分欠損歯列に対して有効な治療戦略の一つであるが,咬合支持を喪失した患者では慎重な経過観察が求められる.

  • 大澤 淡紅子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 373-376
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は71歳男性.義歯を装着するだけで痛みがあり咀嚼困難を主訴に来院した.下顎両側臼歯部は顎堤吸収が著しく,義歯の維持,安定が得られていなかった.旧義歯に多くの問題があったためまず治療用義歯を製作し,更なる機能向上のために下顎にインプラントオーバーデンチャーを装着した.

    考察:下顎の顎堤吸収が著しい症例に2本のインプラントを埋入し,オーバーデンチャーを装着することで義歯の動きを制御することができた.これにより義歯が安定し,患者満足度の向上につながったと考えられる.

    結論:下顎の高度顎堤吸収症例に対してインプラントオーバーデンチャーを用いることで良好な治療結果を得た.

  • 大塚 英稔
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 377-380
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は66歳の女性.下顎義歯装着時の違和感から旧義歯の使用を中止したことに起因する咀嚼困難と |34 欠損による審美不良を主訴に来院した.大連結子の設計を変更した治療用義歯を用いて装着時の違和感と咀嚼機能の改善を確認したのち新義歯を製作した.|34 欠損部は固定性のブリッジとした.

    考察:下顎義歯の大連結子を変更したことによる装着時の舌感の変化と義歯の支持・把持の向上が義歯装着時の違和感を軽減できたと考えられる.上顎固定性ブリッジは,陶材焼付冠を用いたことから審美的に良好であり患者の満足感に寄与したと考えられる.

    結論:部分床義歯の大連結子に対する違和感に対して義歯の設計変更の有用性が示された.

  • 横山 紗和子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 381-384
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は62歳男性.1| の疼痛と歯肉腫脹を主訴として来院した.数年前より 6-2| に可撤性義歯を製作し使用していたが,1| の疼痛のため装着できない状態であった.患者は固定性補綴装置による咀嚼機能と審美性の回復を希望していたため,顕著な骨吸収を認める欠損部に対し,歯肉付き固定性インプラント補綴装置により機能回復を図ることとした.

    考察:インプラント補綴装置による咀嚼機能と審美性の改善によって,口腔関連QOLの向上に寄与することができたと考えられる.

    結論:審美障害と咀嚼障害を認める症例に対して,固定性インプラント補綴装置と残存歯の歯冠補綴装置により良好な治療結果を得ることができた.

  • 黒住 琢磨
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 385-388
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は70歳の女性.臼歯欠損による咀嚼障害および前歯部ブリッジの審美障害を主訴に来院した.上下顎臼歯部の欠損放置による咬合高径の低下および下顎偏位を認めた.早期にプロビジョナルレストレーションおよび治療用義歯を製作し下顎位の再設定を行った.欠損部に対しては,最終補綴装置として,スクリュー固定式インプラントブリッジを用いた.

    考察:インプラントによる臼歯咬合支持の回復後も,10か月以上下顎位の経過観察を行うことで臼歯部の咬合高径の変化に対応することができた.

    結論:下顎偏位を伴う欠損症例に対して,インプラントを用いて咬合再構成を行い咀嚼障害および審美障害を改善することができた.

  • 相原 一慶
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 389-392
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:72歳男性.下顎左側大臼歯部欠損による咀嚼困難を主訴に来院.下顎左側大臼歯部欠損による咀嚼障害および下顎右側臼歯部ブリッジの不適合を認めた.インフォームドコンセントの後,口腔内スキャナーとCAD/CAM技術を用いて外科用ガイドプレートを作製し,6|67 欠損部にインプラント治療を行った.

    考察:CBCTと口腔内スキャナーのデータから補綴主導型インプラント埋入を行い,CAD/CAM技術を利用して上部構造を作製することで,咀嚼能力が向上し,長期的に良好な結果につながった.

    結論:下顎遊離端および中間欠損に対し,デジタル技術を用いてインプラントによる固定性補綴治療を行うことで,咀嚼能力が向上し,患者の満足を得ることができた.

  • 加藤 芳実
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 393-396
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:77歳の女性.義歯床下粘膜部の咀嚼時疼痛を主訴として来院した.診断の結果,Eichner分類はC1であり,歯周基本治療および設計要件を満たした治療用義歯の装着を行った.残存歯の咬合平面は不正であり,重度歯周炎も存在したが,患者は介入を希望しなかった.そのため,咬合面被覆型のレストを備えた連結強度の高い義歯を装着した.

    考察:連結強度が高く,咬合平面を是正できる義歯による補綴治療を行った.その結果,義歯の動揺を最小限に抑えることが可能となり,良好な経過を得ることができた.

    結論:咬合平面の乱れを伴うEichner分類C1の本症例は,連結強度を高めた最終補綴装置の装着により,咀嚼能力を改善することができた.

  • 太田 拓哉
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 397-400
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:58歳の男性,臼歯部咀嚼障害などを主訴として来院した.全顎的な歯周疾患と咬合支持不足ならびに顎関節症を認めた.治療用義歯等を用いた予備的治療の後にミリングテクニックを用いた部分床義歯で補綴処置を行った結果,機能的にも審美的にも高い満足を得ることができた.

    考察:咬合支持不足ならびに下顎の後方偏位により顎関節症を発症したと考えられた.安定した部分床義歯装着によって,下顎頭位の安定が図られ,また義歯非装着時の審美性の確保も相まって安定した経過をたどっていると考えられた.

    結論:ミリングテクニックを応用した部分床義歯で,義歯の安定と良好な咬合関係の確立により口腔関連QOLの向上に寄与した.

  • 佐藤 智哉
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 401-404
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は60歳女性,上顎シングルデンチャーの不適合による咬合時の違和感と咀嚼困難を主訴に来院した.上顎の総義歯の不適合と咬合平面の不調和を認め,下顎位は不安定で,口腔清掃状態は不良であった.歯周治療と暫間補綴装置による咬合再構成を行い,適切な顎間関係と咬合の安定を確認した後に金属床義歯と歯冠補綴装置による補綴歯科治療を行った.

    考察:ゴシックアーチ描記法により適切な顎間関係を付与し,義歯機能時の安定性に配慮した最終補綴装置の設計を行い,良好な経過が得られた.

    結論:適切な下顎位と咬合平面を回復し,咬合平衡が確立した後に最終補綴装置を製作し装着したことで,良好な治療結果を得た.

  • 佐名川 徹
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は39歳の女性,上顎右側中切歯の審美不良および鈍痛を主訴に来院した.抜歯矯正にてプロファイルや上下正中線を改善するとともに,矮小な過剰歯にポーセレンラミネートベニアを用いて中切歯形態を付与し審美改善を行った.

    考察:治療後には歯周組織の炎症はなく歯肉形態も維持され,患者の精神的不快感は改善された.補綴装置と歯肉の調和,骨格に応じた歯軸,適切な咬合が得られたことによって,長期安定した結果が得られたと考える.

    結論:一歯の補綴であったとしても,全顎的診断のもとにトップダウントリートメントを行うことで,審美と機能が調和した補綴歯科治療となることが示された.

  • 石田 桂大
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 409-412
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:66歳女性.上顎前歯部補綴装置の審美不良を主訴に来院した.上下顎の大きさの差異が顕著であり,前歯部反対咬合の対向関係を示す上顎前歯部欠損症例に対し,上顎テレスコープ義歯および下顎歯冠補綴装置を新製した.

    考察:治療用義歯を含むプロビジョナルレストレーションにより咬合平面を改善し,装着感と審美性について十分に検討した後に最終補綴装置へ移行したことにより,患者の十分な満足を得ることができた.

    結論:リジッドサポートの概念に基づく可撤性義歯の装着により,審美性を改善し,患者の十分な満足を得ることができ,良好な経過が得られた.

  • 竹内 義真
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 413-416
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は66歳女性.上下顎全部床義歯が安定剤を使用しないと食事ができないことを主訴に来院した.また,過去の歯科治療に不信感があり,特にインフォームドコンセントが課題であった.そのため,補綴歯科治療を実施していくうえで,主観的および客観的評価を患者と情報共有し,両者の評価を参考に補綴歯科治療を実施した症例である.

    考察:主観的および客観的評価の記録を患者と共有することにより,過去の歯科治療の不信感が軽減され,補綴歯科治療の協力が得られたと考える.

    結論:主観的および客観的評価は患者との信頼関係を構築するための手段となり,また,治療の分岐点の判断基準の参考となる.

  • 山口 哲史
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 3 号 p. 417-420
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は60歳の女性.多数の骨隆起と上顎残存歯のフレアアウトに伴う咬合高径低下によって顎堤粘膜の疼痛が惹起され,咀嚼障害が認められた.有床Splintによる下顎位の修正後,強固な金属フレームによる部分床義歯を装着した.

    考察:狭小なデンチャースペースのため義歯装着後の調整の余地は少なく,Splintによる下顎位の決定が有効であったと考えられる.その後,状況の変化に応じた処置を実施することで,十分な咀嚼機能を維持することができた.

    結論:顕著な骨隆起と咬合高径低下に伴う咀嚼障害対して,有床Splintによる下顎位の修正後に剛性の高い部分床義歯を装着することで,良好な経過を得ることができた.

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