2023 年 15 巻 3 号 p. 317-320
症例の概要:31歳の女性.舌癌による舌切除と下顎区域切除術の施行後,審美障害を主訴に来院した.残存歯は中心位での咬合接触がなく,舌運動は低下し,咀嚼・嚥下・発音障害を併発していた.下顎顎義歯と舌接触補助床を製作,機能的形態を付与し機能訓練を行った.
考察:顎義歯の装着により審美性が得られるとともに,咬合が付与されたことで咀嚼サイクルが安定した.舌接触補助床を用いた機能訓練が舌筋や舌骨上筋群を強化し舌圧と舌運動範囲を増大させた.
結論:顎欠損に対し顎義歯装着が審美・咀嚼障害の改善をもたらした.さらに,舌接触補助床を用いた機能訓練により,舌運動低下に伴った咀嚼・嚥下・発音障害の改善を得た.