2023 年 15 巻 4 号 p. 547-550
症例の概要:患者は87歳女性.上顎全部床義歯の維持力低下,下顎部分床義歯の動揺による咀嚼困難と下顎残存歯の審美不良を主訴に来院した.習慣性咬頭嵌合位に異常を認めなかったため,治療用義歯の顎位を保持した状態で上下金属床義歯の製作を行った.下顎残存歯の補綴装置と同時に上下の義歯装着を行うことで,咀嚼機能の回復と審美性の改善を図った.
考察:可撤性有床義歯の審美領域に設定した維持装置は審美性に劣るが,高齢患者にとって固定性の補綴装置と比較してメインテナンス等を考慮すると非常に有効な選択肢であると考えられた.
結論:本症例では,金属床義歯と歯冠補綴装置により,審美性と咀嚼機能を回復し,患者の口腔関連QoLは術前に比べ向上しており,良好な結果を得ることができた.