日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
16 巻, 1 号
令和6年1月
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第132回学術大会/メインシンポジウム「臨床へ実装されるバイオロジー研究 ~研究室から診療室へ~」
  • インプラント開発研究の経緯から上市まで
    澤瀬 隆, 十河 基文
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     インプラント臨床における第一義は,失われた歯の咀嚼機能を代替すること,すなわち失われた歯に代わり咀嚼荷重を支持することである.「荷重」付加の時期や多寡はその成否にきわめて重要な要素であり,荷重のもたらすインプラント周囲への影響を明らかにしたいという思いから,インプラント周囲骨の骨質に着目した研究に着手した.幸運にも骨質の評価方法として「骨の配向性」と出会い,さらには多くの助言を得て「骨質を制御するインプラントスレッドデザイン」の開発を手がけ,製品開発につなげることができた.本稿では,みずからの経験を基に,インプラント研究開発の概要から上市に至った経緯を紹介するとともに,一般的な産学連携共同研究,そして大学における研究の権利化,そして社会実装までの工程について解説し,アカデミアとしての研究開発,社会還元の望むべきあり方について考察する.

  • ─研究〜特許〜ライセンス〜ロイヤリティ収入の裏話─
    二川 浩樹, 田地 豪
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     セルフコントロールのできない患者さんのために,バイオフィルムの形成に関わる因子を利用して,逆にバイオフィルムの制御を行おうと考えたことが,産学連携につながっている.その研究は大きく二つあり,一つ目はL8020乳酸菌の利用である.口腔内にはオーラルフローラと呼ばれる常在微生物叢が存在している.腸内細菌叢と同様に,その中に乳酸菌を含んでいるため,プロバイオティクスを口腔に応用する研究を行ってきた.特に,ミュータンス菌,歯周病菌,カンジダ菌に対して高い抗菌性を示すラクトバチルス・ラムノーザス(L8020乳酸菌)を用いたシーズについて紹介する.

     二つ目は,歯の表面やインプラントなどに抗菌性を付加できるようにするため,手指などの消毒に用いられる消毒薬部分とシラン系の固定化部分をあわせ持つ固定化ができる抗菌剤Etakを合成した.このEtakは,吹き付けたり浸漬するだけで,今まで抗菌性を持っていなかったものを簡単に抗菌加工できるというものである.このEtakには抗ウイルス効果もあり,いろいろな用途で活用されている.

     本稿では,L8020やEtakの特許取得やロイヤリティについてなど,具体的な産学連携研究の事例を紹介する.

◆企画:第132回学術大会/シンポジウム3「リアルワールドデータの歯科における利活用」
  • 山本 陵平
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     1990年代以降に普及したevidence-based medicineにおいては,ランダム化比較試験(RCT)によるエビデンスが重要視される.しかしながら,RCTで確認された効能(efficacy)が,リアルワールドにおいても同様に確認されるとは限らないため,大規模なリアルワールドデータ(RWD)を利用した観察研究において,その効果(effectiveness)を確認しなければならない.RWDを利用した観察研究は,さまざまなバイアスの影響を受けやすいため,傾向スコア法や操作変数法等の技術を活用して,適切にバイアスに対処しなければならない.

  • -リアルワールドデータの活用-
    豆野 智昭, 大槻 奈緒子, 山本 陵平, 池邉 一典
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     医療や介護の現場で日常的に発生する情報を集めた「リアルワールドデータ」は,近年,臨床研究で用いられる機会が多くなっている.本稿では,2017~2021年度に行われた大阪府後期高齢者歯科健診の約25万人分のデータと,国保データベースシステムの医療・介護データを基とした大規模コホート研究から,欠損歯列が欠損の拡大に与える影響について,筆者がこれまでに得た知見を紹介したい.さらに,臼歯部咬合支持と死亡との関連を評価した結果を踏まえ,Eichnerの分類,Cummerの分類,そして宮地の咬合三角といった咬合支持の観点から,欠損歯列が更なる歯の欠損,そして全身へ与える影響について考察する.

◆企画:第132回学術大会/専門医研修会「補綴難症例に対する補綴歯科専門医の解決策を共有する その2 睡眠時無呼吸症患者の治療」
  • 重田 優子, 安藤 栄里子, 井川 知子, 重本 修伺, 小川 匠
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     一般的に,閉塞性睡眠時無呼吸症(Obstructive sleep apnea: OSA)の原因として,【肥満】や【加齢】が挙げられている.さらに,OSA発症率は,【性差】があることも報告されており,女性と比較し,男性は高いとされている.

     これら三つの因子は,主に疫学的考察からOSA発症の一因と考えられているが,それぞれ,発症のメカニズムに関しては不明な点が多い.

     今回は,肥満・加齢・性別とOSAの関係について,気道の形態変化に関する過去の研究結果を踏まえ,二次元/三次元画像における上気道の形態的な所見から考察を加えた.また,注意すべきOSA関連所見,いわゆる,上気道狭窄に対する覚醒時の生体の代償反応についても考察する.

  • 渡辺 崇文, 槙原 絵理, 八木 まゆみ, 大楠 弘通, 李 宙垣, 有田 正博
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

     閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA; Obstructive Sleep Apnea)患者に対して,歯科医師は主に口腔内装置(OA;Oral Appliance)の製作という形でその治療の一端を担っている.OA治療では,医療機関への検査依頼状や歯科技工所への技工指示書など,文書によるやり取りが必要である.ここで重要なことは,基本的な治療の流れを把握し,的確な技工指示のもとOAを製作・提供すること,患者を中心とした医科歯科連携体制を整え,円滑な治療と継続的なフォローを心がけることである.本稿では,OSA患者に対するOA治療を行う際に,医療機関や歯科技工所との連携において押さえておきたいポイントを紹介していきたい.

原著論文
  • 藤原 基, 島田 淳, 仲井 太心, 渡辺 秀司, 片岡 加奈子, 玉置 勝司
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    目的:咬合違和感症候群(Occlusal discomfort syndrome:ODS)患者の病態分類とその症状に関する修飾因子についての関連性を検討する.

    対象:2012年1月17日~2021年12月7日に神奈川歯科大学附属病院専門外来を受診した患者272名のなかから,咬合違和感を訴えた患者72名を対象とした.

    方法:予診表,構造化問診より発症の契機,咬合と顎関節の検査の結果を資料に医療面接を実施し,ODSを病態から分類し,得られた患者個々のバックグラウンドから,その修飾因子の抽出とその強さのレベルの評価を行った.

    結果:ODSの定義に従って抽出された対象患者72名の内訳は,男性15名(平均年齢51.8±16.1),女性57名(平均年齢54.4±11.7)であった.その病態を咬合障害によるODS(ODSⅠ型),顎関節障害によるODS(ODSⅡ型),口腔心身症によるODS(ODSⅢ型)に分類することができた.その頻度は,ODSⅠ型は46%,Ⅱ型は10%,Ⅲ型は44%であった.修飾因子は,①心理社会環境因子,②患者-歯科医師関係因子,③性格傾向因子,④精神的因子,⑤その他の要因,⑥なしに分類し,その関与レベルを評価した結果,ODSⅠ,Ⅱ,Ⅲ型の群間で有意差が認められた.

    結論:ODSにおける病態分類の関連性が確認され,その修飾因子とそのレベルの評価の必要性が確認できた.

  • 堀坂 寧介, 久保 至誠, 丸山 和久, 大井 孝友, 難波 秀樹, 山本 修平, 桃井 保子, 介田 圭, 江越 貴文, 平 曜輔
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 16 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    目的:個人歯科診療所における鋳造冠の生存時間を推計し,それに影響を及ぼす因子を探索する.

    方法:6か所の個人歯科診療所を調査期間中に受診した20歳以上の患者の中から,初めての来院から10年以上経過し,鋳造冠を装着した既往があり,本研究への参加の同意が得られた者を研究対象者とした.選択バイアスを小さくするため,最初に装着した全部鋳造冠と前装鋳造冠のデータのみを診療録から収集した.また,成績に影響を及ぼすと考えられる因子についても調査した.イベントを再治療と定義し,装着時から再治療の診断が下された時点あるいは最終来院時までを生存時間とした.生存分析には,カプランマイヤーとログランク検定,Cox比例ハザードモデルを使用した.

    結果:682人の研究対象者から全部鋳造冠 (MC:542歯)と前装鋳造冠 (FC:282歯)の計824歯の生存時間に関する情報が得られた.10年後の生存率はMCで74.2%,FCで75.3%,生存時間の中央値はMCで20.8年,FCで19.7年と推計された.再治療の主な理由は,脱落,齲蝕,根尖性歯周炎,歯根破折,補綴的要求であった.生存時間に有意に影響する因子は,「初回製作か再製作か」,「術者」,「装着時の残存歯数」,「装着時の再治療リスク」であることが判明した.なかでも再製作の場合,生存時間が著しく短くなった(ハザード比3.4).

    結論:鋳造冠の生存時間の中央値は20.7年と推計されたが,再製作したときは14.6年と有意に短くなることが明らかになった.

専門医症例報告
  • 中島 義雄
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は62歳の女性.重度辺縁性歯周炎による歯の動揺および咀嚼時の疼痛を主訴に受診.上下顎多数歯の動揺を認めた.患者は多数歯抜歯および抜歯後の可撤性補綴装置の製作を希望した.抜歯後は治療用義歯を用いて,顎間関係,義歯形態および審美性を診査し,上下顎金属床義歯を最終補綴装置として製作した.

    考察:義歯装着後4年経過しているが,義歯使用時の痛みや義歯破損などは認めず,患者の満足度は高いことから,良好な結果を得られたと考えられる.

    結論:重度辺縁性歯周炎へ多数歯抜歯を行い,その後の治療用義歯を用いて顎間関係および審美性の診査を行い,最終補綴装置に反映させることで良好な結果が得られたと考えられる.

  • 村上 高宏
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:63歳,男性.下顎左側臼歯部のブリッジ動揺による咀嚼困難を主訴として来院した.動揺の原因となっている予後不良歯を抜歯した後,インプラント治療を行った.

    考察:予後不良歯の処置を行い,インプラント体で支持した固定性歯冠補綴装置を装着したことで,咀嚼機能は向上していることが明らかとなった.また,口腔内スキャナーを用いたことで,適合の良好な補綴装置を製作することが可能となったため,安定した経過を得られていると考えられた.

    結論:本症例において,口腔内スキャナーを用いて上部構造を製作した結果,高い印象精度と咬合採得の簡易化が可能となり,患者の主訴である咀嚼障害を改善することが可能となった.

  • 宗政 翔
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:62歳の女性.左上の歯の痛みを主訴に来院され,|4 を歯根破折のため抜歯した.|3 の歯根が遠心に強く傾斜していたため,|4 相当部を避け |567 相当部へインプラント体を埋入し,近心延長ブリッジ形態の金合金ハイブリッド型コンポジットレジン前装冠を装着した.

    考察|4 歯根破折の既往から過大な咬合力やパラファンクションの存在が疑われたため,最終上部構造の咬合面はメタルとし,摩耗やチッピングが生じにくいよう配慮した結果,長期的に安定した経過が得られたと考える.

    結論:上顎片側遊離端欠損〔Ⅱ級〕症例に対するインプラント補綴は,確実な咬合支持の付与と咬合力に耐えうる素材の選択により,患者満足度の高い良好な結果が得られた.

  • 吉岡 裕也
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は59歳の女性.食事がしづらいことを主訴に来院した.上顎左側臼歯部・下顎右側臼歯部欠損による咀嚼障害と診断し,固定性インプラント義歯を用いて咀嚼機能を改善させた.側方滑走運動時の負荷が臼歯部欠損原因の一つと考え犬歯誘導咬合を付与した.プロビジョナルレストレーションで経過観察したのち,その形態を再現した最終補綴装置を装着した.

    考察:本症例においては臼歯欠損部位に固定性インプラント義歯を用いたことにより,良好な経過を維持している.

    結論:左右のすれ違い咬合症例に対してインプラント補綴治療を行い,口腔関連QOLが向上した.

  • 江口 香里
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:59歳の男性.主訴は上顎部分床義歯の不備による違和感.絞扼反射が強く,上顎前歯部プロビジョナルブリッジの穿孔と上顎左側第二大臼歯欠損部のデンチャースペースの不足を認めた.絞扼反射誘発部位の検査,治療用義歯を用いた咬合挙上,違和感を生じない大連結子の位置と種類の検証を行った後,脱感作療法により印象採得時の絞扼反射の軽減を図りながら部分床義歯の製作を含む欠損補綴治療を行った.

    考察:違和感に対する診査を十分に行った後,最終補綴装置の製作に移行したことで,審美的,機能的に良好な予後を得られたと考えられる.

    結論:部分床義歯に対する違和感を改善し,安定した経過と患者の満足を得ることができた.

  • 横山 正起
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:80歳の男性.上下顎無歯顎で,わずかな開口による義歯の脱離・浮き上がり,咀嚼困難を主訴に来院した.低位咬合と下顎左側で顎堤吸収を有していた.義歯の安定を得るために,義歯床面積を拡大後,高径を3mm挙上した治療用義歯を装着した.その後,治療用義歯を参考に最終義歯を装着した.

    考察:口腔関連QOL,グミゼリーによる咀嚼能力と運動パターン,口腔内水分量は,治療用義歯装着後と新義歯装着後に良好な値を示し,咀嚼機能が向上することが明らかになった.

    結論:低位咬合を有する無歯顎患者に対し治療用義歯応用後に新義歯を装着することで,口腔関連QOLおよび咀嚼機能が改善し,長期的に良好な結果が得られた.

  • 萱島 浩輝
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は65歳の男性.食事しにくいという主訴で来院した.臼歯部咬合支持が喪失しており,咬合平面の不正,前歯部の咬耗に伴う咬合高径の低下ならびに審美性の低下を認めたため,咬合挙上を行い,全顎的に補綴歯科治療を行った.

    考察:補綴学的基準平面,ジルコニアを用いた補綴装置の設計を考慮した補綴歯科治療を行ったことで,咀嚼機能と審美性に関して良好な結果が獲得できたと推察する.

    結論:臼歯部咬合支持の喪失により咬合高径が低下した症例に対して,補綴学的基準平面を考慮して,適切な咬合平面および咬合高径を設定し,全顎的に咬合再構成を行った結果,機能的かつ審美的な改善を得ることができた.

  • 田口 耕平
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は65歳女性.上顎前歯部に繰り返し行われた修復処置に起因する審美不良を主訴に来院した.当該部位は,複数回の修復治療後に生じた二次齲蝕とそれに伴う審美不良と診断した.初診時のアンテリアガイダンスを再現し,ジルコニアをフレームワークとして用いたオールセラミッククラウンによる補綴処置を行うこととした.

    考察:咬合関係に留意し,適切な材料選択,補綴設計,接着操作を行ったことにより,良好な長期経過を得ることができたと考えられる.

    結論:ジルコニアをフレームワークとして用いたオールセラミッククラウンを上顎前歯部に適用することにより,長期的に安定した審美性の改善が達成できた.

  • 根本 怜奈
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:79歳女性.前臼歯部欠損による審美障害,咀嚼障害,発音障害を主訴に来院した.金属アレルギーが疑われたため,アレルギー検査を行い,診断後,治療用義歯を製作し,咬合を安定させた.続いて保存困難歯の抜歯,前歯部補綴ののち,上下顎の最終義歯の再製作を行った.

    考察:金属アレルギーが疑われる患者に対してアレルギー検査およびラバーダム防湿下での補綴装置除去を行うことで術中のアレルギー症状を最小限にすることにより,QoL(Quality of Life)を高めることができた.

    結論:金属アレルギー患者に対し,検査後に全顎的補綴修復を行うことで審美性の回復および咀嚼能力と発音の改善を認め,その結果,患者の口腔関連QoLが向上した.

  • 平田 恵理
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:初診44歳の女性.審美不良を主訴に来院.左側口唇口蓋裂を伴い出生し,顎裂部再建術と歯科矯正治療の既往がある.上顎ブリッジの支台歯の齲蝕による審美障害と診断し,ブリッジ除去と同時にプロビジョナルデンチャーを装着し審美性を改善後,電鋳テレスコープ義歯を装着した.

    考察:審美性改善と上顎残存歯の負担軽減のため,粘膜支持を最大限に利用した電鋳テレスコープ義歯を装着した.これにより,残存歯の負担を軽減し良好な経過につながったと考えられる.

    結論:左側口唇口蓋裂を伴う上顎部分歯列欠損症例に対して電鋳テレスコープ義歯にて補綴治療を行うことにより,審美性を改善し,患者の口腔関連QOLが向上した.

  • 松尾 信至
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:45歳の男性,上顎義歯の脱離による咀嚼困難を主訴として来院した.上顎全部床義歯における,前歯部の義歯研磨面および人工歯の排列位置が不適切であった.旧義歯に対する辺縁封鎖の確認を行った後に,調整した旧義歯を参考にして新義歯を製作し,高い満足度を得ることができた.

    考察:旧義歯に対してティッシュコンディショナーによる辺縁封鎖を行い,新義歯の辺縁部および研磨面に反映させることで,新義歯の維持が増加し,義歯が脱離せず咀嚼することが可能となった.

    結論:上顎のニュートラルゾーンを考慮しデンチャースペースの確認を行うことで,口唇口蓋裂の既往を有する患者の上顎全部床義歯の辺縁封鎖が改善できた.

  • 田山 秀策
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は70歳男性で繰り返す下顎部分床義歯破折を主訴に来院した.下顎隆起と舌感によるデンチャースペースの制限,クレンチング,硬性食品摂取による過大な咬合圧が義歯破折と関連していた.下顎隆起切除術には患者の同意が得られなかった.メタルフレームワークを適用したが下顎隆起と舌感に起因する構造上の脆弱性は残存した.咬合様式の選択,歯根膜粘膜支持域の確保,ブラキシズムと摂取食品に対する指導により過大な咬合圧に対応した.

    考察:義歯の機械的強度向上,咬合圧軽減,咬合圧分散に配慮した結果,義歯破折が回避された.

    結論:高頻度に義歯破折傾向を有する症例において,多角的な対応により良好な結果が得られた.

  • 大川 純平
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:67歳の女性.上顎義歯の易脱離と下顎左右小臼歯部の違和感を主訴に来院した.|67 および 85+5 が残存しており,すれ違い咬合および咬合平面の乱れを呈していた.そこで,上下顎に暫間義歯を製作し,咬合平面を決定した後,上下顎に対し根面アタッチメントを用いた残根上義歯を製作した.

    考察:暫間義歯により咬合平面を修正と咬合関係の診断を行い,最終補綴装置では根面アタッチメントを用いた残根上義歯により歯根膜粘膜支持および維持を獲得したことで,咀嚼機能および審美的な回復が得られた.

    結論:すれ違い咬合に対して根面アタッチメントを用いた残根上義歯を装着することで,義歯の安定性が向上し,良好な機能回復が得られた.

  • 石田 晃裕
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:56歳(初診時)女性.顎関節部の疼痛および下顎運動障害による咀嚼困難を主訴に来院した.低位咬合および咬合干渉を認めたため,スタビライゼーションスプリントを用いて改善を図り,プロビジョナルレストレーションを用いた咬合再構成を行った後に,最終補綴治療に移行した.

    考察:プロビジョナルレストレーションによる咬合再構成後に,長期にわたって顎関節の不快症状が再発しないことを確認し,最終補綴装置の設計指針とした.その結果,生理的な下顎位での最終補綴装置製作がなされたと考えられた.

    結論: 低位咬合を伴う顎機能障害患者に対して,顆頭安定位を基準とした生理的な下顎位で最終補綴を行い,良好な結果を得た.

  • 秋葉 奈美
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:66歳の男性,咀嚼困難を主訴に来院した.下顎両側臼歯部欠損を長期間放置していたことにより補綴空隙が不足し,大臼歯の咬合支持喪失に起因すると思われる鋏状咬合と過蓋咬合を認めた.スプリント型の治療用義歯を装着し咬合挙上を行い適切な咬合を付与した後に,最終補綴治療を行った.

    考察:治療用義歯により補綴空隙の確保と顎位への適応を判断した後に,キャップクラスプにより強固な咬合支持を確保し,鋏状咬合と強い咬合力に対応したことが良好な治療結果につながった.

    結論:キャップクラスプを設置した義歯により,積極的な歯冠補綴治療を伴わずに可撤性の部分床義歯で咬合平面の修正と咬合支持を確保することができた.

  • 中島 正
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は69歳の男性.咬耗と歯根破折による咀嚼困難を主訴として来院した.診察,検査の結果,著しい咬耗症による咀嚼障害と診断した.

    考察:著しい咬耗症によって咬合平面の不正や咬合高径の低下が疑われた.可撤性補綴装置を用いて咬合高径を決定し,歯冠補綴装置に反映したことで良好な結果が得られたと考えられる.

    結論:著しい咬耗症患者に対して可撤性補綴装置を用いて咬合高径を決定し,プロビジョナルレストレーションで経過観察し,固定性最終補綴装置に反映されることで咀嚼機能が改善された.

  • 西根 万純
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:73歳の女性.上顎部分床義歯の動揺による咀嚼困難と歯の動揺を主訴に来院した.診断の結果,プロビジョナルレストレーションと治療用義歯を用いて咬合平面と咬合高径の是正を行った.咬合崩壊レベルの症例であるため,連結強度を考慮した金属床義歯を設計し,補綴前処置として支台歯に歯冠修復を行い,金属床義歯を装着した.

    考察:義歯の回転沈下を防ぐために,支台装置の連結強度を高めた最終補綴装置を装着した.その結果,適切な支持・把持が得られ,咬合力の分散が可能となり良好な予後を得ることができた.

    結論:咬合崩壊レベルである本症例は連結強度を高めた最終補綴装置の装着により,咀嚼能力を改善させることができた.

  • 原川 良介
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:73歳の女性,義歯の動揺と審美不良を主訴に来院した.診断の結果,すれ違い咬合に伴う咬合高径の低下を認め,旧義歯と咬合高径挙上副子により咬合高径を挙上した.支台歯と義歯の連結強度を考慮して補綴前処置として歯冠補綴処置後,金属床義歯を装着した.

    考察:挙上により,上下顎義歯の補綴スペースが改善され,審美性を改善した義歯を製作することができた.支台歯と義歯の連結強度を高めた設計により,咬合力分散と義歯の動揺の抑制を図り,良好な予後を得ることができた.

    結論:咬合高径の低下を伴うすれ違い咬合である本症例は,咬合高径挙上と連結強度を高めた最終補綴装置の装着により,主訴を改善させることができた.

  • 大野 充昭
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 131-134
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は63歳の女性で,7+7765|567 欠損に対する上顎全部床義歯,下顎部分床義歯を装着していたが,義歯の転覆による咀嚼障害および義歯床の口蓋被覆による味覚異常の改善を希望していた.7+7 欠損に対して,ボーンアンカードデンチャータイプの固定性インプラント義歯,765|567 欠損に対して,歯冠形態のインプラント義歯にて機能回復を行った.

    考察:機能回復後,患者の味覚異常・咀嚼障害は消退し,また,補綴装置の破損などのトラブルもなく,良好に経過している.

    結論:味覚異常・咀嚼障害を訴えるEichnerの分類C2の欠損パターンの患者に対して,上顎インプラント体支持補綴治療は有効な治療法の一つであると考えられた.

  • 今井 実喜生
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:76歳,男性.上下顎全部床義歯を使用していたが,下顎全部床義歯の不安定による咀嚼困難を主訴に来院.旧義歯は,上下顎ともに人工歯の著明な咬耗を認め,粘膜面の適合が不良であり咬合時に義歯の動揺を認めた.人工歯排列位置と義歯床研磨面形態の修正による主訴の改善を目的とし,上下顎全部床義歯の新製を行った.

    考察:垂直的・水平的顎位,人工歯排列位置,咬合様式,床形態を適切に設定したことにより,義歯の安定と咀嚼能力の向上を得ることができたと考えられる.

    結論:適切な顎位の設定と床形態の付与を行ったことで,義歯の安定と咀嚼機能の回復が得られた.

  • 宍戸 駿一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は29歳の女性.主訴は外傷による歯の脱落,破折に伴う審美不良と咀嚼困難であった.インプラント治療と固定性補綴装置による治療を行った.上顎前歯欠損部顎堤が外傷により口蓋側に変位しており,インプラント上部構造の補綴学的工夫により審美性と咀嚼機能を改善した.

    考察:インプラント上部構造のカントゥア調整によるリップサポート回復,歯肉色陶材の使用,アバットメントや上部構造固定様式の適切な選択,さらにインプラントと天然歯への適切な咬合の付与により,良好な経過と患者の高い満足を得た.

    結論:顎堤変位等によりインプラント埋入位置が適切ではない症例においては,上部構造の補綴学的工夫が重要である.

  • 近藤 威
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:63歳男性.歯冠の形態や色調に対する不満を主訴に来院した.ブラキシズムの自覚があり,全顎的に著しい咬耗を認めた.全顎的プロビジョナルレストレーションを装着し,約1年間かけて咬合調整や形態調整を行った.Computer-aided design (CAD)を用いて,プロビジョナルレストレーションの形態を正確に再現した最終補綴装置を作製した.

    考察:長期間の調整により確立したプロビジョナルレストレーションの形態をCADの利用によって最終補綴装置に再現したことでquality of lifeの向上を得た機能的な補綴歯科治療が達成できた.

    結論:著しい咬耗により咬合高径が低下した患者に対して,咬合挙上を伴う咬合再構成により,審美障害が改善し,良好な治療経過を得た.

  • 大木 郷資
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 147-150
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:臼歯部の咬合支持を喪失した多数歯欠損症例において咬合平面と水平的な顎位の設定は重要である.本症例は,上顎無歯顎,下顎両側遊離端欠損に対し上顎全部床義歯のみ装着し,臼歯部咬合支持を喪失した状態で長期期間経過していたため,顎位の不安定と咬合平面の不正を認めた.

    考察:本症例では咬合平面の修正,臼歯部咬合支持の確立を行ったのち,ゴシックアーチ描記法にて水平的顎位の評価をし,新義歯を製作したことで適正な下顎位を獲得することができた.

    結論:プロビジョナルレストレーションと治療用義歯を使用し,ゴシックアーチ描記法を用いて評価し,補綴装置製作に取りかかることができたため良好な結果が得られた.

  • 稲森 佳名子
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:54歳男性.臼歯部欠損拡大による咀嚼障害および上顎義歯不適合を主訴に来院した.残存する臼歯部咬合支持は1か所のみで,下顎前歯からの突き上げにより上顎前歯の補綴装置脱離や支台歯損傷の可能性があり欠損拡大や左右すれ違い咬合への移行が危惧されたため上顎前歯部へブリッジ製作,上下顎臼歯欠損部へ部分床義歯製作を行い審美性と機能の回復を図った.

    考察:装着後3年以上経過し大きな変化や問題は生じていない.咬合支持喪失前に治療開始できメインテナンスを継続できたことで良好な経過が得られたと思われる.

    結論:上顎前歯一次固定と臼歯部咬合支持回復により欠損の拡大を防ぎ,左右すれ違い咬合への移行を回避できた.

  • 小出 勝義
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 155-158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は36歳女性.審美不良と食事困難を主訴に来院した.患者は歯科恐怖症で今まで応急処置のみで対応してきた.齲蝕による審美障害と咀嚼障害,臼歯部咬合支持の喪失による咀嚼障害と診断し,上顎はブリッジ,下顎は部分床義歯による補綴治療を行った.

    考察:側方ガイドに関与する上顎犬歯に矯正的挺出を行ったため,一次固定により力の分散を図った.また,フェイスボウトランスファー,ゴシックアーチ描記,側方チェックバイト採得を行い,咬合器顆路調節により,咬合器上での下顎運動の良好な再現を試みた.

    結論:全顎的補綴歯科治療を行ったことで,患者のQOLが向上し,長期にわたり良好な結果が得られている.

  • 一色 ゆかり
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 159-162
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は79歳男性.かかりつけ医で製作した義歯が合わず,痛みがあることを主訴として来院した.咬耗によりクリアランスが不足し,維持装置の破損を繰り返していた.上顎金属床義歯を新製した後,咬合高径を維持するためメタルティースへ置換を行った.

    考察:金属床義歯を新製し,咬合高径が低下する前にメタルティースに置換できたことより,咀嚼機能検査で高い数値を維持することができていると考えられる.

    結論:臼歯部欠損による咬合高径の低下が認められ,咬合力が強く,咬耗が著しい症例に対して部分床義歯により機能回復を図ることは有効であり,咬合高径の維持にはメタルティースの有用性が示唆された.

  • 清水畑 誠
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 163-166
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:74歳女性.前⻭がすり減って見た目が気になる,奥⻭が壊れてかめないことを主訴に来院した.咬耗による審美・咀嚼障害に対して咬合挙上を伴う前⻭部コンポジットレジンと臼歯部の部分床義歯を用いた咬合再構成を行った.

    考察:咬合挙上を行うことでクリアランスを確保し,審美的な⻭冠形態の付与が可能となった.咬合平面の是正により咬合のコントロールを行うことが可能となった.今後は咬合状態の変化に注意しながら経過観察を行うことが重要と考える.

    結論:咬耗による審美・咀嚼障害の症例に対して咬合挙上による咬合再構成を行った結果,主訴であった審美,咀嚼において良好な結果を得ることができた.

  • 丸濵 功太郎
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 167-170
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:65歳男性.下顎可撤性部分床義歯の異物感と上顎前歯部の審美障害を主訴に来院した.患者は可撤性部分床義歯の連結装置と形態の変更による主訴の改善が難しいこと,また固定性補綴装置による咀嚼機能と審美性の回復を希望していたため,上顎前歯部は固定性ブリッジ,下顎欠損部はインプラント義歯により機能回復を図ることとした.

    考察:下顎可撤性部分床義歯をインプラント支持による固定性補綴装置にすることで,患者の満足につながった.上部構造装着後3年経過後も,インプラント体周囲の炎症や上部構造体の破折などは認められない.

    結論:可撤性義歯の異物感と審美障害が主訴の患者に固定性補綴装置を適応し良好な経過を得た.

  • 白石 浩一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:47歳女性,咀嚼困難,開口困難,審美不良を主訴に来院した.診察,検査の結果,低位咬合および反対咬合による咀嚼障害と開口障害が認められた.咬合再構成を図った後,最終補綴装置を装着した.

    考察:スタビリゼーションアプライアンスを用いることで,最終補綴装置と同様の咬合高径で違和感が生じるか事前に確認できた.また,得られた顎位をチェックバイトで採得し,プロビジョナルレストレーションにて咬合とアンテリアルガイダンスを再現し,最終補綴装置の咬合関係とした.

    結論:スタビリゼーションアプライアンスを用いて顎位を決定し,咬合再構成を行い,最終補綴装置を製作し,審美障害,咀嚼機能が改善した.

  • 片山 昇
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は34歳女性.下顎右側第一大臼歯(6|)の疼痛による咀嚼困難と審美による不満を主訴に来院した.上顎歯列狭窄による反対咬合と複数歯欠損を呈しており,保存不可能な歯の抜歯などの補綴前処置後,インプラント補綴と矯正治療を行った.

    考察:矯正治療とインプラント治療によって,犬歯誘導による臼歯部離開咬合を付与したことで機能圧が適切に分配され,咀嚼および審美において良好な状態が続いていると考えられる.

    結論:本症例においては,歯列不正があり欠損補綴が必要な患者に対し,インプラント補綴と矯正治療により咬合が回復し,良好な結果が得られた.

  • 勝田 悠介
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は69歳の女性.主訴は歯周炎による疼痛およびインプラントの破損と動揺による咀嚼困難であった.左右の臼歯欠損により咬合支持域の顕著な減少が起きたが,インプラントと延長ブリッジによる治療を行い,良好な予後を得ることができた.

    考察:完全歯列への再建は行わなかったが,適応が困難だった義歯を避け,かつ外科的侵襲を最小限にして患者の負担に配慮した治療計画を立案し,咀嚼機能の回復と口腔関連QoLを向上させることができた.

    結論:固定性補綴治療を使い分け,短縮歯列の考え方も併用することで,患者の満足する機能を回復することができた.

  • 磯島 慧悟
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 183-186
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:68歳女性.歯が揺れ,痛くてかめないことを主訴に来院した.保存困難な残存歯を抜歯後,治療用義歯を装着した.治療用義歯にて機能的,形態的に評価した後,上下顎にコーヌステレスコープ義歯を製作した.

    考察:コーヌステレスコープ義歯を用いて上下顎残存歯の二次固定効果が得られ,義歯の安定や咀嚼および審美障害の改善が得られた.

    結論:多数歯欠損を有する患者に対し,上下顎にコーヌステレスコープ義歯による補綴処置は咀嚼機能の回復と審美性の改善に有効で,患者の高い満足を得ることができた.

  • 太田 緑
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 187-190
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は74歳の男性.下顎義歯床下粘膜の疼痛を主訴として来院した.高度骨吸収および下顎隆起に起因する義歯床下粘膜の疼痛による咀嚼障害,上顎総義歯の安定不良による咀嚼障害と診断した.複製義歯を用いた閉口機能印象により上下顎新義歯を製作し,下顎は軟質リラインを行った.

    考察:複製義歯をトレーに用いたことで,旧義歯の形態を保存しつつ新義歯を製作できた.軟質リラインの応用により,下顎隆起を義歯の維持に利用しつつ咬合力の集中を避けたことで,義歯の維持・支持が向上し,咬合力,咀嚼能力が改善した.

    結論:高度顎堤吸収があり下顎隆起も存在する症例には,軟質リラインを応用し下顎隆起部のアンダーカットを利用することが有効であると考えられた.

  • 上里 ちひろ
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 191-194
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:61歳の女性.前歯部の審美障害および義歯が使用できないことによる咀嚼困難を主訴として来院した.欠損部位に口腔インプラントを埋入した後,全顎的な補綴処置を行った.

    考察:装着より5年半が経過し,現在までに咬合の変化は確認されていない.口腔インプラントにより咬合を支持し,また機能性反対咬合の改善により側方運動時の不正な咬合接触を除去した結果,さらにはモノリシックジルコニアの使用により咬合面の形態の変化を抑制したことで,長期的な安定を得ていると考えられる.

    結論:本症例において,機能性反対咬合の改善と口腔インプラントによる補綴とを併用した結果,咀嚼障害が改善された.

  • 杉村(上村) 江美
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 195-198
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は37歳女性.上顎前歯部の疼痛および違和感を主訴に来院した.1|12 が歯根吸収していたため,抜歯し,1||2 にインプラントを埋入した.口腔内スキャナーでプロビジョナルレストレーションの形態と歯肉・粘膜形態を印象採得し,得られた形態データを利用してモノリシックジルコニアを用いたスクリューリテインの最終上部構造を製作し,装着した.

    考察:本症例の方法は従来法より簡便で,治療および技工に要する時間を短縮し,さらに印象材や石膏といった使用材料が削減できた.

    結論:本稿で紹介したフルデジタルワークフローで製作したインプラント上部構造は患者に装着後,臨床的合併症や破折は報告されなかった.

  • 帆鷲 美織
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は血友病Aを有する44歳男性.抜歯後の義歯製作を希望し当科を受診した.暫間補綴装置を用いて計画的に多数歯の抜去を進め咬合挙上を伴う咬合再建を行い,部分床義歯およびブリッジにて機能的・審美的回復を行った.

    考察:計画的な暫間補綴装置の製作と抜歯により身体的リスクの軽減を図った.咬合支持数が大きく減少する難症例に対し,暫間補綴装置で咬合再建を行いながら治療を進め,咬合高径や前歯部形態の修正を行ったことで,咀嚼機能や審美性の回復に寄与したと考えられる.

    結論:全身疾患を考慮した治療計画を立て,暫間補綴装置によって修正した咬合や形態を最終補綴装置に反映させることにより,良好な結果が得られた.

  • 米澤 紗織
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 203-206
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:55歳の男性.義歯の破折を主訴に来院した.口蓋裂の既往があり幼少期からスピーチエイドを使用していたが3日前に破折した.検査の結果,多数歯齲蝕,重度慢性歯周炎および鼻咽腔閉鎖不全と診断し,全残存歯の抜歯を行った.使用していたスピーチエイドは,良好に機能していたことから形態を参考にしてスピーチエイド付き全部床義歯を製作した.

    考察:口腔内への関心の低い患者に十分に治療説明を行い継続した通院を実現できた.また,全部床義歯による補綴治療を選択し予知性の高い治療ができたと考える.

    結論:使用中のスピーチエイド形態を複製し,新義歯に組み込むことで鼻咽腔閉鎖不全と咀嚼障害を改善し良好な経過が得られた.

  • 野代 知孝
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 207-210
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は22歳の女性.近医で |2 を歯根嚢胞によって抜歯された上顎前歯中間欠損による審美障害を主訴に来院した.検査の結果,唇側の骨量が不足していたため,骨造成を併用したインプラント埋入術を行った.ジルコニアフレームに陶材を築盛した最終上部構造を製作し,審美的改善を行った.

    考察:インプラント上部構造として,角度付きスクリュー・チャネルを使用し,プロビジョナルレストレーションの形態を最終補綴に反映することで機能性・審美性・清掃性に優れた歯冠補綴装置を製作することができたと考える.

    結論:上顎前歯中間欠損症例に対する骨造成およびインプラント治療は,審美性の回復と良好な口腔機能に有効であることが示唆された.

  • 小原 大宜
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 1 号 p. 211-214
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は66歳女性.咬耗による前歯部の審美不良と咀嚼困難を主訴に来院した.著しい咬耗と咬合高径の低下に伴う補綴空隙の減少,義歯の適合不良が認められたため,咬合挙上を伴う全顎的な補綴治療を行い,患者の審美的,機能的な障害の改善を図った.

    考察:咬合挙上量を慎重に検討し,オクルーザルアプライアンスおよび暫間補綴装置を用いて咬合挙上を行い最終補綴へ移行することで,審美的,機能的に高い患者満足度を得られ,口腔関連QoLの向上に大きく寄与したと考えられる.

    結論:咬合挙上を伴う全顎的な補綴治療により,著しい咬耗による審美不良と咀嚼困難を訴える患者の審美性および咀嚼機能の改善を図ることが可能である.

feedback
Top