2025 年 17 巻 1 号 p. 46-49
症例の概要:患者は80歳の男性で,下顎義歯の動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.上下顎全部床義歯の維持安定不良による咀嚼障害と診断した.上下顎無歯顎で,下顎顎堤は吸収が著しく,顎堤頂まで可動粘膜である部位も認め,患者主導の閉口機能印象により上下顎全部床義歯を製作した.
考察:著しい顎堤吸収により,術者主導の辺縁形成による義歯の外形の決定が困難な部位においても,閉口機能印象を用いて患者の運動により辺縁形成を行うことで,機能運動を阻害しない範囲まで義歯床を延長することができた.
結論:顎堤が著しく吸収した無歯顎患者において,全部床義歯の製作に閉口機能印象を応用することは,咀嚼機能の回復に有効であった.