2026 年 18 巻 3 号 p. 212-218
舌接触補助床(PAP)は口蓋部を厚くし,舌と口蓋部の接触や舌運動を補助することで,食塊の咽頭への送り込みを改善し,摂食時間短縮や舌圧向上,咽頭残留の減少などの効果をもたらす.舌癌術後や脳血管障害,神経筋疾患,サルコペニアなどによる舌運動不全に対して適用される.症例に応じて軽量化やLingual Augmentation Prosthesisとの併用などの工夫が必要な場合もある.また,鼻咽腔閉鎖不全と嚥下障害の同時改善目的での軟口蓋挙上装置(PLP)とPAPの複合型装置や,経口で栄養チューブを間歇的に挿入する栄養法であるOE法を支援する口腔内装置などもあり,義歯を含めさまざまな口腔内装置が摂食嚥下リハビリテーションに貢献することが可能である.これらの装置は,歯や咀嚼機能を補うだけではなく「口腔内で食塊を適切に移動させることを補う」ものであり,歯科医師の専門性が発揮される領域である.病院内で摂食嚥下リハビリテーションが行われることも多く,病院における補綴のニードは実は大きい.特に回復期はニードが大きく,多機関での調査で義歯治療や嚥下リハビリテーションへの関与実績が多かった.多職種連携のなかで,補綴が嚥下機能改善に果たす役割は少なくない.