抄録
症例の概要:患者は62歳の女性.上顎正中離開部の補綴物の審美性を主訴に来院した.義歯により臼歯部の咬合を確保したうえで,上顎前歯を後退させ正中離開を閉鎖した.
考察:動的治療期間中に犬歯,小臼歯間に空隙が広がることはなかった.これは上唇の緊張感が強いことと臼歯部での咬合が確立されていたため前歯の後退のみによって正中離開の閉鎖が行え,側切歯,犬歯が近心移動しなかったと考える.術後4年半経過したが,後戻りはなく歯周状態も安定している.
結論:補綴修復のみでは対称性が得られない正中離開症例に対し,部分矯正を併用した補綴修復を行うことによって,患者の満足も得られ長期的に良好な経過が得られた.