抄録
欠損歯列に対する補綴処置を考える場合,従来はどのように機能を回復するか,装置をいかに長期に安定させるかが重要な課題としてとりあげられてきた.しかしながらそれにも増して,来院された状態より「歯と顎骨の欠損を拡大しない」ことを目的とし,そのためには何をみて何をしなければならないかを問題にする必要があるように思われる.本稿では,補綴装置を装着して5年以上,最長25年を経過した110症例の経過観察結果から,「適合・外形・咬合・剛性」に関して分析した結果をもとに,特に「欠損が加速的に拡大した症例」と「欠損が進行しなかったか,進行がわずかであった症例」について考察した.