抄録
症例の概要:患者は57歳の女性.下顎右側歯肉癌,中咽頭部癌および白板症により右側舌半側切除を含む右側中咽頭・下顎骨を切除後,特に「カ行」に構音障害が生じ,当科初診となった.構音機能の回復を目的に,/ タ/・/ キ/・/ カ/ の3子音のパラトグラムを用いて口蓋床口蓋部形態を形成した舌接触口蓋床を装着した.
考察:舌半側に加えて下顎骨や咽頭腔を含む広範囲を切除した本症例に対する,/ キ/・/ カ/ のパラトグラム応用の有効性と口蓋床後縁部形態の重要性が示唆された.
結論:「カ行」の構音回復の困難な舌切除患者に対して,パラトグラムを用い作製した舌接触口蓋床により,構音機能および嚥下機能などが改善し,良好な経過を得た.