抄録
症例の概要:患者は78歳の女性で上下顎無歯顎である.咀嚼障害を主訴として来院した.下顎に高度の顎堤吸収を認め,現義歯の維持,安定は不良であった.また舌房が狭く,人工歯排列位置と咬合様式の選択不良も考えられた.そこでピエゾグラフィを行い,人工歯排列位置,義歯研磨面形態を決定した.また咬合様式はリンガライズドオクルージョンとし新義歯の製作を行った.
考察:ピエゾグラフィによって臼歯部人工歯排列を適切な位置に行い,咬合を舌側化させる咬合様式を選択することによって,本症例のように顎堤吸収の著しい場合においても義歯を安定させ,咀嚼機能を改善することができた.
結論:高度顎堤吸収症例に対しピエゾグラフィの利用は,義歯の安定を得るのに有用であった.また総義歯製作時には,その顎堤条件や患者の食品の嗜好などを考慮して適切な咬合様式を選択することが重要である.