抄録
症例の概要:76歳,男性.2009年2月,下顎高度顎堤吸収を伴う,義歯不適合による咀嚼困難を主訴に本学補綴科に来院した.発音を利用しデンチャースペースを採得するピエゾグラフィおよび機能的運動路法により機能的咬合面形態を付与した金属二重構造義歯を装着した.
考察:人工歯排列位置および義歯筋圧面形態が患者固有のデンチャースペースと合致したことから,義歯の維持安定を獲得でき,また機能的咬合面形態の付与により義歯調整回数を減少するだけでなく,咬合の長期安定に寄与したと考えられた.
結論:高度に吸収した下顎顎堤に対して,生理学的な形態および機能的咬合を付与した義歯は咀嚼機能の長期安定に有効であった.