抄録
症例の概要:患者は初診時66歳の男性であり,多数歯欠損による咀嚼障害を主訴に来院した.Eichnerの分類はC1であり,義歯使用歴はなかった.暫間義歯にて機能回復を図り,調整にて咬合の安定が得られたため,歯冠修復と可撤性部分床義歯の再作製を行った.
考察:すれ違い咬合では,欠損部と反対側での支持能力の差を小さくすることが重要であると考える.本症例では,残存歯を補綴装置で連結固定して支台歯の保全を図り,機能圧を顎堤粘膜と残存歯に分配する設計とした.また,部分床義歯には強固なメタルフレームを用い,義歯床のたわみを防いだ.
結論:すれ違い咬合症例に対し,可撤性部分床義歯にて咬合支持を再建し,良好な機能回復を得た.