日本補綴歯科学会誌
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ISSN-L : 1883-4426
7 巻, 3 号
日本補綴歯科学会第123 回学術大会より/オベイトポンティックを考える
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画論文:オベイトポンティックを考える
報告
◆日本歯科医学会プロジェクト研究費平成24 年度採択研究事業報告概要
原著論文
  • 南 慎太郎, 菊池 雅彦, 坂本 智史, 岩松 正明
    2015 年 7 巻 3 号 p. 240-248
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    目的:少数歯欠損の短縮歯列症例に対する治療方針は,積極的に補綴処置を行うか,放置しても問題がないとするかで対極的に分かれる.そこで本研究では,短縮歯列の機能的特徴を評価するために,短縮歯列で咀嚼した際の咀嚼筋活動への影響について検討した.
    方法:被験者は健常有歯顎者8名である.はじめに,各被験者の下顎に 7+7 のレジン製スプリントを作製し,その後,スプリントの臼歯部を後方から順次削除して 6+65+5 の短縮歯列をシミュレートした.3種類のスプリントをそれぞれ装着した状態で,ライスまたはビーフジャーキーを咀嚼させ,咀嚼開始から嚥下終了までの筋活動を,咬筋,側頭筋から導出し,7+76+65+5 のスプリント間で筋活動量,総咀嚼回数を比較した.
    結果:歯列が短くなるに従って,総筋活動量は増加する傾向が認められた.また,歯列が短くなるにしたがって,咀嚼回数も増加する傾向があった.短縮歯列で咀嚼した際の咀嚼筋活動への影響は,6+6よりも 5+5 が大きかった.一方,1回の咀嚼に要する平均筋活動量はほぼ一定であった.
    結論:全ての大臼歯の咬合支持が失われた短縮歯列への補綴処置の有用性が示唆された.
  • -歯科麻酔科からみた誤飲・誤嚥事故防止策としての暫間補綴処置材料の開発-
    朝比奈 輝哉, 掛谷 昌宏, 内藤 宗孝, 福井 壽男, 片山 正夫, 宮坂 勝之
    2015 年 7 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    目的:嚥下や喉頭反射機能が低下した高齢者や鎮静下処置・全身麻酔管理下の患者では,義歯や暫間被覆冠(以下: 暫間処置材)の脱落は時に致死的な状況をもたらすが,日常的に直接口腔内処置に関わらない医科麻酔科医や救急科医などの認識は高くない.本研究は,歯科理工学的物性検証及び補綴臨床と麻酔科・救急医療領域との連携を考察する上で,暫間処置材などに用いられているX線造影性を伴わない常温重合レジンに,新たにX線造影性を付与し,従来発見されにくかった異物誤嚥による難治性誤嚥性肺炎の発生や窒息死亡事故の防止につなげることを目的とした.
    方法:ナノジルコニア粉末(東ソーTZ-0)を用い暫間処置の素材である常温重合レジンへのX線造影性の付与を試み,放射線診断学測定(X線造影性・均一分散性)および歯科理工学的物性(三点曲げ強さ・初期硬化時間・表面硬さ)を測定した.
    結果:ナノジルコニアの添加により,添加量依存性にレジンのX線造影性を向上させ表面硬さを保つが,一定の機械的強度・耐性上の劣化,初期硬化時間の軽度延長もみられた.
    結論:常温重合レジンへ30~40wt%の適切な配合でナノジルコニア添加を行うことにより,歯科理工学的物性を損なわずに暫間補綴処置における臨床応用の可能性が示唆された.
専門医症例報告
  • 土居 聖
    2015 年 7 巻 3 号 p. 258-261
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は初診時67歳の女性.1年ほど前から下顎前歯部の咬耗が気になり来院した.下顎前歯部に著しい咬耗が認められた.咬耗による審美障害と診断し,有床義歯型のオクルーザルスプリントを用いて適正な咬合高径を回復した後,全顎的補綴処置を行った.
    考察:オクルーザルスプリントを用いて咬合高径を回復し,筋電図による機能評価を行うことで,その効果を裏付けることができた.
    結論:重度の咬耗による咬合高径の低下を認める患者に適正な咬合高径の補綴処置を施すことで,咀嚼機能および審美障害を回復し,長期にわたり患者の満足を得ることができた.
  • 青 藍一郎
    2015 年 7 巻 3 号 p. 262-265
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:65歳女性.義歯不適合,ブリッジの動揺と審美障害を主訴に来院した.口腔内診査,X線診査,歯周組織診査の結果,すれ違い咬合による咀嚼障害及び審美障害と診断した.治療用義歯の製作後,全顎的補綴前処置を行い,適切な咬合高径の回復を図る治療計画を立案した.治療用義歯にて安定が確認された咬合高径にて,最終義歯を製作した.
    考察:最終義歯により臼歯部咬合の安定,口腔関連QOLの改善が実現した.3年経過した現在も安定した術後状態を保っている.今後も咬合接触状態,歯周組織の術後管理が重要であると考えている.
    結論:最終義歯の装着により,咬合関係の改善と審美性の回復,口腔関連QOLの向上が認められた.
  • 三好 慶忠
    2015 年 7 巻 3 号 p. 266-269
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:55歳女性.左側顎関節部の関節雑音を伴う開口困難を主訴に来院,生活習慣指導とスタビライゼーション型スプリントを用い治療を開始した.顎関節症症状の改善とともに習慣性咬合位における咬合接触の異常が明らかになったため,補綴処置により修正した.その後経過観察中に,顎関節症症状が再発することはなかった.
    考察:スプリントにより,顎関節症を改善させ,本症例の顎関節症症状と咬合因子との関連を明らかにし,必要な補綴処置を適切に進めることができた.
    結論:顎関節症に対しては可逆的な治療法を選択することが推奨されているが,咬合因子との関連が明らかな場合には,速やかに補綴治療を行う必要があると考えられた.
  • 佐藤 奈保子
    2015 年 7 巻 3 号 p. 270-273
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は64歳女性.上顎臼歯部辺縁歯肉の炎症性疼痛と下顎義歯不適合よる咀嚼障害を主訴に来院した.上顎残存歯補綴装置のマージン部不適合と,中等度慢性歯周炎による水平的骨吸収のため,歯冠歯根比の減少が認められた.歯冠歯根比の改善と口腔清掃状態の向上を図るため,治療義歯を装着した.将来的に咬合関係に影響を与えにくい設計を考慮し,最終補綴として磁性アタッチメントオーバーデンチャーを選択した.
    考察:咬合力の分散と歯冠歯根比の改善により,機能時における義歯の安定が図れたものと考える.
    結論:すれ違い咬合の治療に磁性アタッチメントオーバーデンチャーを適用し,長期的に良好な経過が得られた.
  • 秦 瑠
    2015 年 7 巻 3 号 p. 274-277
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は78歳女性.上下部分床義歯の不適合および支台歯の動揺による咀嚼障害を主訴に当科を受診した.本症例は前後的なすれ違い咬合を呈しており,歯牙欠損側では上下顎とも高度な顎堤吸収を伴っていた.保存不可能な歯牙を抜歯し,磁性アタッチメントを用いたオーバーデンチャーを装着する事で咀嚼機能の回復を行った.
    考察:磁性アタッチメントを用いることで,支台歯への負担を軽減させるだけでなく,オーバーデンチャーにすることで咬合平面の是正が可能となったことが良好な術後経過につながったと思われる.
    結論:磁性アタッチメントを使用したことで顎堤吸収の高度な症例に対して,良好な術後経過を得た.
  • 春田 明日香
    2015 年 7 巻 3 号 p. 278-281
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は初診時66歳の男性であり,多数歯欠損による咀嚼障害を主訴に来院した.Eichnerの分類はC1であり,義歯使用歴はなかった.暫間義歯にて機能回復を図り,調整にて咬合の安定が得られたため,歯冠修復と可撤性部分床義歯の再作製を行った.
    考察:すれ違い咬合では,欠損部と反対側での支持能力の差を小さくすることが重要であると考える.本症例では,残存歯を補綴装置で連結固定して支台歯の保全を図り,機能圧を顎堤粘膜と残存歯に分配する設計とした.また,部分床義歯には強固なメタルフレームを用い,義歯床のたわみを防いだ.
    結論:すれ違い咬合症例に対し,可撤性部分床義歯にて咬合支持を再建し,良好な機能回復を得た.
  • 藤本 俊輝
    2015 年 7 巻 3 号 p. 282-285
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:上顎臼歯部が欠損し,全顎的な著しい咬耗により咬合高径の低下を認める70歳男性.下顎歯牙の上顎への突き上げによる咬合崩壊が懸念されたため,咬合挙上することで咬合再構成を行い,咀嚼機能と審美障害を回復した.
    考察:咬合支持歯の喪失が起因となり,ブラキシズムが増長し,咬合高径の低下に繋がった.咬合挙上を伴った咬合再構成をしたことで,補綴処置から約6年が経過したが,残存歯の保全が図れ,咀嚼機能と審美障害を回復することができたと考える.
    結論:著しい咬耗に伴う低位咬合症例に対して,咬合挙上を行うことで欠損歯列の崩壊を食い止め,良好な結果が得られた.
  • 村上 任尚
    2015 年 7 巻 3 号 p. 286-289
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は74歳女性.顎堤吸収の進行への不安と咀嚼困難を主訴に来院した.治療用義歯を用いて咀嚼機能を回復するとともに下顎位を決定し,上顎前歯部歯槽部を中空とした全部床義歯にて最終補綴処置を行った.
    考察:上顎顎堤が高度に吸収した患者の義歯補綴にあたり,義歯の体積と重量の増加は,しばしば維持力の低下を招く.本症例では,義歯床前歯部を中空化することにより,重量を減じこの問題に対応した.最終補綴後3年を経過するが,審美性,使用感に関する患者本人の満足度は高く,良好に経過している.
    結論:上顎高度顎堤吸収症例に対し,軽量化した義歯を適用することで良好な治療経過を得た.
  • 向坊 太郎
    2015 年 7 巻 3 号 p. 290-293
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/18
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は69歳の男性.下顎義歯の動揺による咀嚼障害を主訴に当科を受診した.口腔内検査では下顎において著しい顎堤吸収を認めた.下顎に2本のインプラントを埋入し,インプラントオーバーデンチャーによる補綴治療を行った.
    考察:顎堤吸収が著しく,義歯の維持が困難な症例において,リテンションディスクの交換による維持力の調整,回復が可能なロケーターアバットメントを使用したインプラントオーバーデンチャーの適用は義歯の維持安定ならびに患者のQoLの改善に有効であると考えられる.
    結論:本症例では,顎堤吸収が著しい無歯顎患者に対しインプラントを用いて補綴治療を行い良好な予後を得ることができた.
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