抄録
症例の概要:初診時82歳女性.下顎前歯部レジン前装冠破損による審美障害と義歯の維持安定不足による咀嚼困難を主訴に来院した.上顎は全部床義歯,下顎は磁性アタッチメントを利用したオーバーデンチャーを製作することとした.
考察:下顎前歯部に磁性アタッチメントを用いた義歯を装着することにより,維持安定の増加と,審美的回復も得られ,良好な結果を得た.また,治療用義歯の段階で,筋電図を参考にして咬合高径の決定に利用したことが,新義歯の咀嚼能力向上に寄与したと思われ,患者のQOLが高まったと考える.
結論:本症例は,前歯部残存歯への磁性アタッチメントの利用が,審美的回復と義歯の維持安定に繋がり,良好な術後経過を得られた.