抄録
症例の概要:患者は73歳女性で,前医での補綴治療後に生じた咬合時不快症状を主訴として来院した.残存歯および補綴装置には症状の原因となる所見を認めなかったが,咬合高径の過高が疑われた.そこで,咬合高径を修正した治療用義歯を製作し,不快症状の消失を確認した後に最終補綴を行った.
考察:治療開始前と比較し,治療用義歯を用いて得られた不快症状の生じない垂直的顎間距離は3 mm 程度小さかった.前医での治療において,顔面計測法のみによって義歯の咬合高径が決定された可能性がある.
結論:すれ違い咬合を呈する少数歯残存症例に対し,治療用義歯を用いて咬合高径を修正し,主訴の改善を図り安定した経過を得ることができた.