2016 年 8 巻 3 号 p. 293-296
症例の概要:60歳の女性.義歯の不適による咀嚼困難を主訴に来院した.残存歯の咬耗,不安定な咬合支持,咬合平面の乱れと低位咬合にともなう義歯不適による咀嚼障害と診断された.治療期間中にすれ違い咬合となったが,オーバーデンチャーを治療用義歯として咬合平面の修正と咬合位の安定を図ったのち,最終補綴治療を行った.
考察:治療用義歯を用い,残存歯に対する前処置を行いながら顎機能と調和した理想的な咬合位と咬合接触関係を確立し,それを参照し最終補綴処置を行うことができた.
結論:多数歯欠損で咬合支持が失われ,咀嚼障害が認められた症例に対し,治療用義歯を併用した補綴治療を行った結果,口腔関連QoLの向上が得られた.