2016 年 8 巻 3 号 p. 301-304
症例の概要:患者は77歳女性.主訴は上顎全部床義歯の動揺および脱離による咀嚼困難であった.上顎は顎堤の高度吸収およびフラビーガムを伴った無歯顎,下顎は両側遊離端欠損であり,顎堤の対向関係は下顎が前方に位置していた.
考察:上下顎顎堤の対向関係不調和を伴う症例において,選択的加圧印象を行い,上顎前歯部人工歯を切端咬合とし,臼歯部人工歯を上顎の頬側咬頭で下顎に咬合させ,さらに上顎犬歯も咬合支持に関与させたことによって,上下顎義歯が安定し良好な術後経過が得られたと考えられる.
結論:印象方法および人工歯排列位置,咬合支持域に留意して義歯作製を行うことが,義歯の維持安定に有効であった.