抄録
目的:カルシウム、鉄分のミネラルは、世代によっては一日所要量を満たしていない点から、これらを含有する食品の積極的な摂取が望まれている。一方、カルシウム、鉄分は、多くの食品に含まれているが、溶出性、体内吸収性が低い点が指摘されている。そこで、酸性調味料の一つであるレモン果汁に着目し、食品からのカルシウム、鉄分の可溶化、溶出性の向上を検討した。さらに、ラット摂食試験により、カルシウムの体内吸収性に対するレモン果汁の影響を調べた。
方法:コマツナ、チリメンジャコ、サンマなどの食材を、フードプロセッサーで粉砕した。各粉砕物1gに比較対照区として蒸留水、レモン果汁、および6%クエン酸溶液(レモン果汁と同濃度)の各20mlを加え、37℃、1時間振盪後、原子吸光光度計にて溶液中のCa、Fe量を測定した。また、ラット試験では、0.3%Ca配合食餌で1%レモン果汁または蒸留水(対照区)を飲水により、1ヶ月間飼育し、糞、尿中Caの定量により、見かけのCa吸収率、保持率を算出した。
結果:すべての食材で、蒸留水よりクエン酸溶液、レモン果汁の方がCa、Feの溶出量が増大しており、レモン果汁の方がクエン酸溶液より少し高かった。また、ラット試験では、蒸留水の飲水に比べてレモン果汁の方が、Ca吸収率、保持率が高まっていた。以上のことから、レモン果汁は、食品中からのCa、Feのミネラルの溶出性を高める効果があり、Caについては体内吸収の向上性が見られた。