抄録
(目的)食事における「におい」は、おいしさを構成する因子として重要なものである。しかし、その判断は主に官能検査でなされており、機器評価の利用については十分に検討されていない。本研究では種々の調理操作により生成する「におい」について、におい識別装置の利用を、数種類のモデル系から検討した。
(方法)におい識別計は、島津製FF-1を用い、測定対象試料は測定袋中99.9999%窒素ガスで置換、充填し、20℃、5時間平衡後に分析を行った。測定条件は、サンプリング時間を6または12秒とした。調製試料としては、1.クッキーによるモデル系:各種アミノ酸とシュクロースを混合後、電気オーブン(180℃、10分)で焼き上げたもの、2.団子によるモデル系:上新粉に一定量のグルコースまたはシュクロースを混合し、20分間、蒸したもの、3.肉類によるモデル系:牛肉(生、脱血などの処理をしたもの等)をホットプレート上で加熱調理したもの、4.炊飯によるモデル系:白米、玄米(市販発芽玄米、調製発芽玄米)を炊飯したものについて行った。測定結果は、SPSSにより、主成分分析を行い解析した。
(結果)クッキーによるモデル系では、アミノカルボニル反応により生成する匂いの差異について、ほぼ識別が可能であった。団子によるモデル系および炊飯によるモデル系から、米飯の匂いへの糖成分、ぬか成分の関与、肉類では不快臭への脂成分の関与が認められた。また、クッキーのモデル系から貯蔵、経過に伴う品質の判断に利用ができると思われた。