抄録
【目的】近年、脂質の摂取においては、その脂肪酸組成、特にn-6/n-3比が問題となっている。我々研究グループは、良質のたんぱく質やビタミンB1の供給源となる豚肉の脂肪酸組成を改善、n-6/n-3比の低い豚肉を試作し、その食味を検討した。
【方法】アマニ油1.5%+ビタミンE200IU添加飼料給与によるもの(試験区)と無添加飼料給与によるもの(対照区)を比較、「焼く-焼豚:ロース肉」「揚げる-とんかつ:ロース肉」「ゆでる-ゆで豚:バラ肉」の3種の調理法により食味評価を行なった。
【結果】1)発育成績は両区とも有意差は認められず、試験区ではロース芯、背脂肪においてn-6/n-3比がそれぞれ4.6、2.5と有意に下がった。2)「焼豚」ではきめ、香り、かたさに有意差が認められ、対照区がきめがこまかく、香りが良く、やわらかいと評価されたが、総合評価では有意差は認められなかった。3)「とんかつ」では肉の色のみに有意差が認められ、試験区がうすいと評価された。その他の評価項目では有意差はなく、例えば、肉の味では対照区の方が、脂身の味では試験区の方が良く評価されるなど反対の結果で、総合評価でも対照区のばらつきは大きいものの平均値は同じとなった。4)「ゆで豚」では肉の色、脂身の色、かたさ、脂身の舌ざわりに有意差が認められた。肉の色では試験区の方がうすいと評価され、脂身の色では対照区が白いと評価された。かたさでは「焼豚」と同様に試験区がかたいと評価された。総合評価では5%の危険率で対照区が良いと評価された。5)以上、バラ肉を用いた「ゆで豚」では対照区の評価が高くなったが、日常的に調理頻度が高いと考えられる「焼豚」や「とんかつ」では有意差はなかった。